ただ、愛が欲しかった。- fifth story -

182. ページ2

嗚呼。



「好きだよ」




透明だった。

もっと汚く泥水のように彼を汚すかと思えば、汚れすら残せない、ただの透明な液体だった。

蒸発してしまえば、想いの証さえ残らない。


なのにそれとは対に、初めて告げた己の感情がより一層恋情を突きつけてくる。

あまりに滑稽で、声をあげて笑ってしまいそうだった。




ああ、私は彼が好きだったのか。

好き、だったのか。

心の中ですら、呟くのすら許さなかった。
私自身が、彼への想い全てを堰き止めていたから。




だから、知らなかった。

私は、光が好きだったんだ。




側にいて、ただ想いを告げることがどれだけ罪深く彼に呪縛を与えるのか。

好き、なんて。
まるで呪いの言葉だ。

告げれば相手の正気さえも吸い取って、死神に引き渡す行為となる。


告げてしまった今、私の罪は月より重い。

星を見上げ、涙を流し、彼を想うことすらもう、誰も許してはくれない。




何故、告げてしまったのだろう。


告げなければひっそりと想い続けられたというのに。

鍵をかけたまま、沈黙の中、愛でることもできたというのに。

私の中にある時限爆弾は、絶望の合図なんて待ってくれない。
自由に気ままに、その時を迎える。

主である私の感情など安易に消し去り、嘲笑うかのように、引き金に指をかけるのだ。


何度も思ったじゃないか。

こちらの世界に彼を引き入れてはいけないと。
誰より大事な彼だったから、私は断絶という方法を取ったのだ。

それをなぜ、今更。

なぜ、告げてしまったのか。




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