紫陽花 (ページ2)

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『A、ちゃんと渡せた？』

講義室の外で待っててくれたすずにそう聞かれた

「うん。
　渡せた……けど。」

『けど？』

「玉森くんに渡せばいいの？って言われた……。」

同じ学部の宮田くん
まだ専門教科よりも選択教科の方が多い私たちは毎回同じ講義というわけではなかった

けれど週に数回の専門教科の時に見かける宮田くんに私は惹かれていた

入学式当日のオリエンテーション

周りの女子が
『ヤバ……
　めっちゃカッコ良くない？』

そうザワザワなったのは

玉森裕太くんだった

透き通るような白い肌に
高い鼻、きゅるんとした目
高身長

まるでモデルのような雰囲気を持つ彼にみんな釘付けになった

確かにかっこいい

でもきっと私とは無縁の人

正直イケメンは苦手だった

自分がかっこいいとわかってる人はどうすれば女の子が自分のために動くかをよく理解している

ちょっと優しい言葉をかければちょろいもんだ

捻くれてるかもしれないけど私はそう思っていた

私が勝手に苦手意識を持っていたイケメンな玉森くん

そんな彼の横にいつもいたのが
宮田俊哉くんだった

ある火曜日の1限目の共通教養教科

私は中国語Aをとっていた

すずはフランス語Aをとっていたのでこの時間はいつも別行動だった

いつも通り教室の真ん中の窓際に座る

教科書とノートを準備しようとしてカバンを開く

「あ………ヤバ………。」

昨日、違うカバンを使っていたせいで私は筆箱を忘れてしまっていた

………どうしよう

今日は諦めるしかないかな……

次の教養教科はすずと一緒だからどうにかなるはず

この授業はとりあえず聞くだけでがんばろう

「はぁ………。」

小さくため息をついた

『大丈夫？どうかしたの？』

小声でそう話しかけてきたのは
隣に座っていた宮田くんだった