さよなら、また。 (ページ4)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:20,111 hit

・ページ4

「いただきます。」

二人揃ってのご飯の挨拶もなんだか久々のように感じる。ご飯もいつもの何倍も美味しく感じた。黙々と、そして子供みたいに口にハンバーグを運ぶ彼はなんだか可愛らしく感じた。

「なに？」
「ん？いや、かわいいなぁって。」
「なんだよそれ。」

いつまでも彼を見つめる私に、冷めるから早く食べろよ、と少しどぎまぎした様子で彼は言った。やっぱりかわいい。

「美味しかった。ごちそうさま。」
「よかった、お粗末さま。」

米粒のひとつも残すことなくご飯を終えた彼。気に入ってもらえてよかったと心から安堵した。彼の好きなハンバーグ、少しでも上手に作りたくて試行錯誤を凝らしてきた。
料理教室にも行ったし、お料理上手の友達にも作り方を教えてほしいと頼った。忙しい彼に私が出来ることはこれくらいだと、そう思って一生懸命勉強した。おかげでハンバーグは私の一番上手な料理になったし、自然と他の料理も上達してお弁当も手の込んだものを作れるようになっていった。美味しかったと言って空っぽのお弁当箱を持って帰ってきてくれるから私も嬉しくて調子に乗ってしまってついついおかずをたくさん入れてしまう。それでも彼がお弁当を残して帰ってきたことは一度もなかった。

ぼーっとそんなことを考えながらお皿洗いをする私の手に彼の手が触れる。いつの間にか後ろから包み込まれるような体勢になっていた。

「いつもうまい飯ありがとう。」

優しさをはらんだ言葉が愛しくてどうしようもなく胸が締め付けられる。洗い物の手を止めて彼の手にそっと自分の手を重ねる。

「こちらこそ、いつも平和を守ってくれてありがとう。」

彼は一瞬、喉をひきつらせた。それは今にも泣き出しそうな音だった。何を抱えているかはわからなかった。話してくれなかった。私のためだとわかっていたけど少しだけ、悲しかった。

「お前のことは、何があっても絶対守るからな。」

少し震えた声でそう言って、私を一層強く抱き締めた。痛いくらいだった。泣いてもいいよと言いそうになったけどぐっと言葉を飲み込んだ。

「私も、強くなんてないけど、あなたを守りたいよ。」

だから、私を頼ってね。どうか、彼に伝わるようにと願いながら世界一愛しい彼を慰めるようにそっと身を預けた。
私を包む彼はとても大きいはずなのに、なぜか子供のように小さくて頼りなさげに見えた。