3 ページ46
｢蒼ちゃん､流石にさ今日からは無理じゃない？
ほら､こっちも色々と整えてからじゃないと｣
｢でもー……泊まれる準備もしてきちゃってるし……なぁ｣
俊平が遠回しに断ろうとしている空気を感じているのかいないのか､蒼介は次にとんでもないことを言い出した｡
｢お家賃なんですけど……先払い……｣
｢蒼ちゃん……！蒼ちゃん！！｣
その話をされたら今度こそ入居確定にせざるを得なくなってしまう｡何とか蒼介をめいくと二人がかりで止めた俊平は､黒崎の方へと居住まいを正した｡
｢あの､大変申し訳ないんですけども､今ですね､お二人に泊まってもらえる場所がなくて……｡
まずこちらで色々と相談しますので､今日のところは……｣
俊平の言葉に､黒崎は難しい顔で黙り込んだ｡一応理由が理由なので納得しているような彼にほっとしながらも､俊平はいつきに｢ごめんね？｣と謝罪した｡すると｡
｢あの……私一人だけ泊まるのはダメですか？｣
｢……ん？｣
思いもしない言葉が彼女から飛び出し､俊平は一瞬の間の後聞き返す｡
Aと礼も思わず顔を見合わせ､流石の黒崎もこれには驚いているようだった｡
｢何を言い出したんだ｣
｢私だけだったら､場所ありますか？｣
｢それは……あるよね？｣
これまた蒼介が普通に返してしまうものだから､めいくは鬼達(礼&A)の方を気にしてバシッと蒼介の背中を叩く｡案の定礼は無言で首を振り､Aは手でバツを作って何度も頷いていた｡
思いもよらぬ事態に発展してしまい､その場がしんと静まり返る｡しかしやがてそれは黒崎の言葉で破られた｡
｢……そうか｡じゃあそうしてもらおう｣
｢え？｣
すると黒崎は立ち上がり､部屋の中を歩き始めた｡急に部屋の中を覗き込まれた陽達は怯えて部屋の奥へと逃げていく｡
それにも構わず､黒崎はイライラした様子で部屋を歩き回った｡
｢娘一人が泊まる部屋くらいあるだろう｣
礼の部屋も覗き込まれ､A達も反射的に仰け反り､声をかける隙もないまま､黒崎は押し入りに来たかのように荒い足取りで部屋を見渡した｡
｢一人部屋じゃなくたっていいんだ｡どっかその辺にでも寝かしてくれればいい｣
｢あー……いやそれは｣
｢夏休みの間中預かってもらえませんか？正直夏の間ずーっと家にいられても､私もどうしていいか分からないんで｣
その言葉を聞き､いつきは表情は変わらないまでも俯いてしまった｡
｢娘も喜ぶ｡私も助かる｡そちらには家賃が入る｡これでウィンウィンウィンだ｣
｢“ウィンウィンウィンウィンだ”って……｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 520人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
とも(プロフ) - 楽しかったですー(^ー^)!!!今後の続きも楽しみにしてます♪ (2021年9月12日 0時) (
レス) id: ff2a1100bf (このIDを非表示/違反報告)
神ちゃんGirl(プロフ) - 待っていました！ありがとうございます！ぜひスローペースになってもいいのでぜひ続けて書いてください！ (2021年9月8日 16時) (レス) id: 651e60b3e1 (このIDを非表示/違反報告)
はろ。(プロフ) - たのしみに待ってます！ (2021年9月8日 1時) (レス) id: 553ee9b60b (このIDを非表示/違反報告)
言ノ葉(プロフ) - 優衣之助さん» コメントありがとうございます！少しスローペースになるとは思いますが､頑張ります(´∀｀*) (2021年8月18日 20時) (レス) id: ebcac45cbc (このIDを非表示/違反報告)
優衣之助 - 待ってました！いやーこの後の物語も楽しみです！待ってます！頑張ってください！ (2021年8月18日 1時) (レス) id: 6e2a5698bc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：言ノ葉 | 作者ホームページ：https://twitter.com/ShinyStars1029?s=09
作成日時：2021年8月18日 0時
