鞭声粛粛 日々脳内 藤へ北へ

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= side Y =

「横尾さん、ちょっと。」

スタイリストさんに 手招きされて
ポールハンガーの側に行けば。

バランス的に とか何とか言われながら
俺は 真っ黒のマフラーを巻き付けられた。

続いて ケントも 呼ばれて。
首に マフラーを 巻かれてる。





昨日に続いて、今日もドル誌の仕事。

真夏に マフラー。
半袖の衣装に マフラー。

ファッション的に あるっちゃあ あるが、
既に メイクも衣装チェックも終わった俺達が
何で わざわざ呼び戻されて
首に 真っ黒の布を巻き付けるハメになったか

･･･ 俺は 知ってる。




.

ついさっき。


『･･･っ！』

みつの チェックをしてたスタイリストさんが
息を飲んで 固まって。

『荒れてるトコ、か、隠し切れてないから
ま、マフラー足しますね？』

そう言って、半袖のTシャツ着た みつの首に
マフラーを巻き付ける 彼女の顔は
真っ赤になってた。



『ん？そなの？ すんませんね。』

顎を んーって上げて
マフラーを 巻いて貰ってた みつ。

(おいおい！！)


そのTシャツの 襟元に 赤いシルシが
チラリと主張して はみ出てたのを
俺は 見逃さなかった。


ふいっと 鏡の前に立つ人に目をやれば･･･

同じく《エリマキ小僧》から外された
太輔の視線と ぶつかった。

ピクピクって 引き攣れる口の端が
無理矢理 作る 笑い。

俺の視線を 左右に逸らしながら
バチバチ瞬きして キョドる 太輔を見れば
何が どうなってんのか 簡単に分かった。


昨日、みつが ビール飲めないコトから
変な空気になってた2人は
ウチ帰ってから ウマくいったんだろう。

そこで 太輔が ハメを外した と。

で、謝りながらも 機嫌よさげに
マフラー巻いて貰ってる おチビさんは
マフラーの 本当の意味を 知らない、
ってワケだ。





「･･･ はぁぁぁ。」

呆れすぎて 何を言う気にも ならない。


『病気の治療で やってるんでなけりゃ
たまに ビール飲んだり ラーメン食べたり、
全然OKなんだぞ？
そんな、気負わず 息抜きしながらやれば？』


色々 調べて。
今日は みつに
そう言ってやろうと 思ってたんだ。

機嫌のイイ《エリマキ小僧》は
自分の胸元の痕に 気付いてない。

悪いのは 目線で泳ぎまくってる 太輔だ。



でも、今日 言うのはヤメだ。

太輔、暫くは タイトな麦抜きで イラつく
みつの八つ当たりを 全身で受けるがイイわ。

みつも みつ だ。

太輔に 好き勝手されて。




はぁ･･･

美味い蕎麦屋にでも

連れて行くか。



end.

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