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相対的に恋をする/宍.戸 ページ10

「…………げ、」
「おいおい、出会い頭それはねぇだろ」


見覚えのある青いキャップに思わず零れた声。それは、女子のものとは思えないくらいの低さと嫌悪を含んでいた。




私は彼があまり好きではなかった。

何と表現すればよいのか分からないが、苦手なのだ。恐らく相性が悪いのだろう。彼との会話には他の人とは違う妙なぎこちなさが伴う。
息ができなくなるような、打開策がどこにも見当たらなくて途方に暮れてまうような、そんな感覚。
そして、やはり少しでも苦手意識を持ってしまったことがいけなかった。一度そう認識してしまったものは、なかなか印象を覆せない。それをずるずると引きずり続け、今のリアクションに至る、のだが。






「……何でいんの」
「何でって言われてもよ……ガム買いに来ただけだし」

流石にこれほどの警戒心を向けられれば、相手も苦手意識に気づく。あちらからして見れば、何も悪いことをしていないのに嫌われている訳だから、申し訳ないことをしている、とは分かっている。それでも、そうなってしまったからには仕方ない。





「で?お前は何でいんだよ」
「はぁ?」
「お前が聞いてきたんだからよ、俺が聞いたっていいだろ」
「……ご飯買いに来た」
「飯?」

なぜ、と言いたげな彼の声色に思わず眉を顰めた。一歩引いているようでしつこいところも苦手だ。しかし変に渋っていても会話を長引かせるだけだ、と真面目に答える。





「…………今日親、仕事でいないから。一人分だし作るのもめんどくさくて」
「あー……そうか、」
「…………何?」
「そんな睨むなって。大変だなって思っただけだよ」


まただ。また、呼吸が出来なくなりそうになる。そんな同情の言葉なんか言わないで。変な優しさが嫌になった。



「……じゃ、俺レジ行ってくるぜ。あ、待ってっから早くしろよ」
「……え」

私が制す前に、彼はミントガムを片手にレジの方へ歩き出していた。驚きで足が竦んで動かなくなりそうだ。
動揺を見せるのは気に食わなくて、縫い付けられたような足を持ち上げる。

……できるだけ時間をかけて買い物しようと思ったが、逃げていると思われるのが嫌で、適当に惣菜パンを掴み、ずかずかとレジへ向かった。

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紫梦(プロフ) - メロンさん» 作業用に仁王君の曲探してたら見つけました。とても良い曲でした!笑 ほんとにリクエストに沿えてるか不安でしたが、そう言って頂けて嬉しいです。リクエストありがとうございました!よろしければまたリクエストお願いします。 (2018年8月31日 22時) (レス) id: 231b2007bc (このIDを非表示/違反報告)
メロン - Fake聞きながら、描いたんですね笑。可愛かったです!リクエストありがとうございました!また、機会があればよろしく御願いします! (2018年8月31日 22時) (レス) id: fd95f0d8fd (このIDを非表示/違反報告)
紫梦(プロフ) - メロンさん» 了解です!できるだけご期待に添えられるように頑張ります。少々お時間頂くかもしれません…! (2018年8月26日 8時) (レス) id: 231b2007bc (このIDを非表示/違反報告)
メロン - 紫梦さん» では、お言葉に甘えて…。初で奥手な仁王くんがみてみたいです~(^w^) (2018年8月26日 2時) (レス) id: fd95f0d8fd (このIDを非表示/違反報告)
紫梦(プロフ) - メロンさん» 世界観だなんてそんな…!私には勿体ないくらいの褒め言葉です…ありがとうございます!仁王くんですね、了解致しました!なにか設定やシチュなどのリクエストあればお願いします〜前の仁王君と被るといけないので! (2018年8月25日 21時) (レス) id: 231b2007bc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紫梦 | 作成日時:2018年7月31日 21時

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