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第3話 士郎と彼女 2 ページ7




そんなくだらない話に花を咲かせているうちに、士郎たちは自宅へと到着した。
千鳥は放浪癖のある叔母のもとで暮らすなかで、士郎の両親に世話になることが多かった。そのうち、士郎たち家族の一員のように同じ家を使うようになったのだ。

玄関のドアを開けると、たしかにシチューのいい匂いがする。「おかえり、3人とも。」とキッチンから顔を覗かせる士郎の母親に、千鳥は満面の笑顔を返した。


士郎たちの家には、千鳥の部屋がある。士郎たちの両親がもともと物置だった部屋を彼女のために空けたのだ。彼女がひとりぼっちの夜を過ごさなくてもいいように。
石狩中との試合の日の晩。夜が更けても、千鳥の部屋は未だ灯りがついたままだった。
その部屋にこんこんとノックの音が鳴り響く。ドアが開くと、そこに立っていたのは士郎だった。

「こら、千鳥。風邪を引いているんだから早く休まないと。」

千鳥は見つかっちゃった、とでも言うように苦笑いを浮かべた。彼女は自分の机の上でパソコンと手帳を広げている。

「ごめんね。でも今日の雷門と星章の試合を観たら居ても立っても居られなくて…」

千鳥のノートパソコンには、今までの星章学園の試合が映っていた。そして手元の手帳には、何やら文字がびっしりと書かれている。星章学園の試合の分析をしていたようだ。

「ただでさえマネージャーの仕事も千鳥がやってるんだ。これ以上無理をすることはないよ。無理すると、風邪も長引いてしまう。」
「うん…。でもわたし、チームの力になりたくて。」

士郎は千鳥のパソコンに手をかけ、『もうこれを閉じて寝なさい』と視線で伝える。千鳥は眉を八の字にして笑うと、パソコンを落とす準備を始めた。


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作者名:いわき | 作成日時:2019年10月18日 0時

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