第20話 アツヤの戦略 2 ページ43
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ハーフタイムに入り、ベンチに戻ってきた雷門は剣呑な雰囲気だった。
「どうなってるんだ！ディフェンスの連携が全く取れてないじゃないか！」
「中盤がしっかりしてないからですよ！中盤でボールが取れないから、オレたちに負担がかかってるんじゃないですか！」
「オレたちだって必死にやってる！自分ばかりが大変だと思うな！」
万作と道成が声を荒げたのを皮切りに、チーム全体がぎゃあぎゃあと言い合いを始めた。それを見ている杏奈とつくしは心配そうに眉を寄せる。
「なんか…マズいことになってない？」
「ええ…。みんなの心がバラバラに……。これじゃあ折角練習したあの戦術も使えません。ここは監督が一言、何か言う場面では？」
杏奈は趙監督にそう進言するも、「いいえ」と監督はそれを跳ね除けた。
「この先、勝ち続けるほどに苦しい場面は何度も訪れるでしょう。それを自分たちで解決してこそ、成長できるのです。」
趙監督の目は、揉め事から一歩離れてチームメイトを見つめる稲森へと向けられている。お互いに声を荒げ合うチームメイトの姿に、稲森はぐっと拳を握り締めた。
一方、白恋ベンチでは。
「アツヤくん！」
「どうした千鳥？そんなこえー顔して」
「どうしたじゃないよ、途中から相手を怒らせることばかりして！」
千鳥が眉を釣り上げて、アツヤを叱りつけていた。しかし、アツヤは悪びれることなく、
「相手を挑発するプレーって言えよ。勝つために頭を使う。当然のことだろ？」
と言った。千鳥は「それは、確かに雷門の強みはチームワークだとは言ったけど…」と不満げだ。そこに士郎が「まあまあ千鳥」と割って入った。
「雷門がもしその程度の策略で壊れていくなら、その程度のチームだってことじゃない？ボクには、雷門がそんなやわなチームには見えないけど。」
士郎の言葉に千鳥はぐっと言葉を詰まらせる。だからといって、と口にするも、後に続く言葉を見つけられず、千鳥は口を噤んだ。
「…まったくお前ら兄弟は……。」
そんな様子を眺めていた染岡は呆れたように溜息をつく。お前も大変だな、とでも言うように生温かい視線を千鳥に送った。
その間、なえはフィールドを眺めながらゆらゆら体を揺らしていた。
「う〜、早うフィールドを駆け回りたいわぁ…。」
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作者名：いわき | 作成日時：2019年10月18日 0時
