【イナアレ】島柄長 (ページ20)

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第10話姫と妖精 1 ページ20

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「……はぁ？」

千鳥の口から飛び出した素っ頓狂な言葉に、アツヤは目を点にする。一方千鳥は謎の言葉を口にしたあと、なえから隠れるようにささっと士郎の後ろに移動した。

「千鳥？どうしたの？」

盾にされた士郎は柔らかく尋ねる。見ると、千鳥の頬も耳も真っ赤で士郎は驚いてしまう。

「ど、どうしよう……すっごく似てる……。」
「似てる？」

千鳥がブツブツとそう呟いたものだから、士郎はもう一度なえに視線を向けた。なえが、似てる？『プリンセス・ナナエ』に？

「…あ、そうか。思い出した。」
「兄貴、一体これはどういうことだよ。」
「ホラ、昔あったでしょ。千鳥の大好きなアニメ。まだボクらが小さかった頃…。」

士郎の言葉でやっとアツヤは現状を理解する。
『プリンセス・ナナエ』──それは5年ほど前に放送されていた、女児向けアニメだ。主人公のナナエが、マジカルプリンセスとなって王国を救う、王道ストーリー。笑いあり涙あり恋愛ありの物語で、女児だけでなくさまざまな年代に人気のアニメーションだった。
そして千鳥も、そのアニメの大ファンだったのだ。

「一時期千鳥がボクらに『自分のこと"ちーちゃん"って呼んでほしい』って言ってたでしょ。あれ、あのアニメに出てくるメイド妖精の名前でさ。千鳥はそのキャラクターが大好きだったんだ。」

アツヤは士郎の話を横に聞きながら、なえの顔をじっと見た。おぼろげな記憶だが、たしかに昔千鳥がテレビで見ていた魔法少女と顔つきが似ている気がする。

「ん？どうして隠れるん？」

なえは早々にアツヤから興味を無くし、士郎の後ろに隠れる千鳥に近づいた。なえが近付くと、千鳥は「ひえっ」と上擦った声を上げてまた隠れる。2人は士郎を中心にくるくると回り始めた。

「もう逃さへんで～！つ～かまえたっ！」
「ひゃあっ！？」

しばらくそうしていると、なえが千鳥にばっと飛びついた。突然のことに千鳥は反応できず、なすがままなえに抱きとめられる。

「は、はわわわ……」

憧れの人、によく似た人に抱きしめられ、千鳥は半分パニック状態だ。身体中真っ赤にして、小刻みに震える。

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