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重ねるだけのキスを何度も、それだけで満足してしまいそうなほど重ねて、そして初めて舌先が触れる。彼のやり方は本当に丁寧で。悪く言ってしまえばなんともしつこい。
今日もまたそうやってゆっくり弄ばれて、じわり暖かくなった体温と荒くなった呼吸に気づいたわたしは彼の口元から離れた。
「ほんと、長いっ」
「じっくりやるのがいいんやって。気持ちよくなって欲しいし」
この人、「作業のための元気を出させてもらう」という最初の目的を完全に忘れている気がする。私のなんとも言えない抗議の表情に気づいているのかいないのか、また口付けをして今度はすぐにこちらの上顎を舌でなぞった。
「〜〜っ!!」
どうにも慣れないこの感覚に思わず腰が浮いて椅子がまたもや音を立てた時、小さくもしっかりとしたノック音が私たち2人の耳に真っ直ぐ届く。そのせいで私の意識は図らずとも我に返った。
「まーしぃ、ここなんだけど」
「あ!センラやん!どうしたんまだ残ってたん?仕事熱心やなぁ!!」
「いや……?それを言うならまーしぃもやろ」
ドクドクと動く心音が縮こまった身体中に響き渡る。大きくてカベがある机で良かった。足元のスペースになんとか隠れながら、生徒会役員であるセンラ先輩に見つからないようそっと息を潜めた。
「あははっ、そう?んでどこの確認に来たん!」
「えっとな、ここで……」
さっきまで呼吸がしにくい状況にあったからか音を立てずに息をするのがなんとも苦しい。漏れ出てしまいそうなのを必死に抑えてその場を耐え凌いで。
……それにしても先輩不自然すぎる。そんなんじゃ絶対バレるから……!!
「よし、ありがとう。今日中に確認取れて良かったわ。じゃあまた明日!」
「おんまた明日な〜。明日の放課後は4人でアイスやからな!忘れんようにな!」
「忘れるわけないやん〜まあ坂田の再テストが無ければやけどな」
恐らく要件も終わり、なんとかいい感じに雑談が終わったところで、扉が閉まる音が聞こえてくる。数秒待ってから、おそるおそる顔を上へと出した。
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憧葛 - こんばんは、憧葛です!作品を読ませていただきました。いやもう本当にどれも神作ばかりで……素敵なお話をありがとうございました!これからも頑張ってください! (2021年12月7日 18時) (レス) @page38 id: e0ae3127c5 (このIDを非表示/違反報告)
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