【お宮参り】7 ★ ページ22
Aがきょとんとしつつ小首をかしげる。
ここからは非常に言いづらいのだが、とても大事なことなので黙っておくわけにはいかない。
子供の将来が絡んでいることをよく考え、一旦頭の中で咀嚼しつつ、まず事実を述べる。
「おそらく翼は妖怪体質だ。」
「えっ!」
「ひとみくん直々に教えてくれた。」
それだけ言うと、Aが抱っこしている翼をガン見した。
相当驚いている様子なのが見てとれるけど、取り乱したりはしていないようだが。
「そ…そうなんだ…。」
一生懸命落ち着こうとしているのか、自分に言い聞かせるように呟く。
ある意味予想はしていた事態だけど、出来れば普通の子供と同じように視えない方が良かった。
「まぁでも生まれた時から妖怪体質だったら、翼にとってそれが普通だ。本人が正しく受け入れられるように、俺たちの経験をふまえて、全力で育てていけば大丈夫だから。」
Aの肩に手を置き、少しでも安心させるために力強く、かつ優しく告げる。
俺だって喘息でつらい時もあるけど、自分の中ではそれが普通だ。
上手く付き合う方法さえ見つければ、何も難しいことなどない。
「うん…。ごめんね、翼くん…。」
「謝らなくていいって。これは想定内だから。だって晴明と白狐の子供だよ?何もない翔のがレアケース。」
翼の頭を撫でるAに寄り添い、守るように二人を抱きしめる。
いつだって家族は一番大切な存在なのだから。
「翔くんは大丈夫なの?」
「ひとみくん情報によると、翔は俺の血が濃いんだって。」
「そっかぁ…。やっぱり兄弟でも違うんだね。」
「うん。きっと真逆だわ。」
顔も性格も、それぞれ持って生まれたものがある。
ひょっとしたら、翼が妖怪体質であることは、何か意味があるのかもしれない。
「Aー、早く来なさい。お父さん待ってるわよ。」
「あ、はーい。」
長々と話し込んでしまったので、拝殿にいるお母さんからお呼びがかかってしまった。
「じゃ、お祓いしてもらお。」
「うん。お宮参りだもんね。御神体によーくお願いしなきゃ。」
気を取り直し、はっと息をはきながら肩の力を抜く。
色々考えた所で、またいつか一つ目小僧が現れるかもしれないし、他の妖怪がどこかにいるかもしれない。
こんな日に、翼の妖怪体質が判明したのも何かの縁だろう。
そんな中でも、なるべく普通の生活ができるように。
羽生家は、まだまだ始まったばかりだ。
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鹿(プロフ) - みなみさん» ありがとうございました。妖怪なんて知識ないので、ネットに頼りっぱなしで…。地震のとき、真っ先に羽生さんを心配してしまいますね。どうか無事で! (2021年2月14日 20時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - ついに完結ですね。面白かったですよ。妖怪が絡むお話なんてなかなかないと思いますし。 大きめの地震がありました。うちもけっこう揺れましたけど、仙台はもっと強い揺れだったようで、羽生くんが心配。とにかく、みんなが無事でありますように。 (2021年2月13日 23時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 〜空〜さん» 完結がモットー(*^^*)みなさんに楽しんでもらえたかなー。自分でも作品を読み返すのですが、最初は書きやすいのですが、だんだんネタが尽きてくるパターンが多いです(笑)くっつくまでが楽しいんですよねー。また読みに来てくださいね! (2021年2月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - キャラメル味さん» 最後結構ばたばたと終わらせてしまいましたが楽しんでもらえてよかったです(*^^*)やっぱり羽生さんには女の子だよなーと、妄想してしまいました。兄をサポートするしっかり者の弟。というイメージですかね。 (2021年2月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 璃子さん» ご愛読ありがとうございました(*^^*)今回双子にしたのですが、成長するとどっちがしゃべってるのか分からなくなりそうで難しいかも。結局新しいお話を書いてしまい、またしんどくて楽しい生活が始まってしまった…。 (2021年2月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2020年12月16日 18時