赤と黒のLiberations4

【ＰＡ】6　★ ページ31

★羽生サイド

さっきから自分の態度がそっけないのは悪いと思っているし、こんな子供じみた態度でAさんに気を使わせているのも理解している。

帰ると言った俺を引き止めない彼女の行動はいつものこと。
しかもそれは、この後練習することになってるからだということも、重々承知している。

でもどうしても今日はダメだった。
それは今日が、日本で二人で過ごせる最後の日だったから。

それを伝えてない自分も悪いけど、面と向かってそんなこと言ったら絶対に泣くのは分かってるし、どうせ寂しいのは俺だけなのだ。

男のくせに彼女の前で涙を見せるとか…、俺のプライドが許せない。

でも、Aさんがパーキングエリアに寄りたいと言いだして、一瞬心が通じたのかと思った。

まだ俺と一緒にいたいのかなって。
もっと側にいたいのかなって…。

「ジュース買ってくるね。」

駐車スペースに停まって、Aさんが車から降りて近くの自動販売機へ行ってしまい、一人車内に残される。

待ってる間、窓越しにぐるっと外を見渡すと、ほとんど人気もなく、トイレだけがある規模の小さいパーキングエリアなのが分かる。

そのままシートに頭をくっつけて夜空を眺めると、どんよりとした梅雨空の雲が、今の自分の気持ちを表しているように見えた。

「だめだな〜…。」

恋愛は二人でするものなのに、時々、自分だけが彼女を好きなんじゃないかって思う。
一方通行みたいに、嘘ついて付き合ったことは、やっぱり意味がなかったのかなって。

でも俺はAさんが好きだし、諦めるとかそういう気持ちはさらさらない。

「この２週間、少しでも好きになってくれたかな…。」

静かな車内で一人呟くと、その願望が他人の声のように耳から入ってくる。
まだAさんから、好きだと言われたことがないのも、物足りなさを感じるわけで…。

でもAさんだって、まだ恋人関係に戸惑っている部分もあるだろう。
いくら俺のことを知りたいと言ってくれても、それは友達としてなのかもしれないし。

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