【雨宿り】9 ☆ ページ21
「一日中巫女装束を着てるわけじゃないよ。いつもはこんなもんだよ。」
「ノーメイク…かわいいじゃん。」
「あんまりジロジロ見ないでよね。」
「ふふ…だめ、見ちゃうわ…。」
「もー。」
ま、病人相手に本気で言い返さないないけど。
いい加減お粥を食べてもらおうと、羽生くんの身体を起こす。
「女の子は?」
「雨が止んですぐ帰ったじゃない。」
「そうだっけ。」
「そうだよ。飴くれたでしょ。」
お粥を手に取り、スプーンですくって火傷しないくらいの温度に冷まし、羽生くんの口元へと運んだら、遠慮がちだけどぱくっと食べてくれる。
「あ、うま。」
「無理して全部食べなくてもいいから。喉が痛いなら、後でもらった飴でもなめたら?」
枕元に紙に包まれたまま置いているの飴、私もまだ食べてないのでポケットの中にある。
「そうだ…もらったわ、飴。」
「どんな味だろうね。」
はい。と再びスプーンを運ぶ。
「うん。あーあ、しんどいけど…なんか幸せ。」
口をもぐもぐさせながら、だんだんご機嫌になってくる。
「何言ってるの。そんなことより、お家に連絡するのすごく緊張したんだからね。」
「そうなの?」
「お母さん、全部知っておられて、恐縮しちゃったよ。」
巫女であることは勿論、実家が神社なのもご存知だった。
さすがに妖怪が視えるとかは言ってないと思うけど。
「だって、言わなきゃ家出にくいじゃん。」
「そうだけど、あんまり言わないでよ…。」
「なんで?彼女の情報は、共有しておいた方がいいでしょ。」
「……。」
羽生くんって、先のことをあまり考えないのかな。
どのみち、生涯独身もしくは婿養子をもらわなきゃいけない私とは、明るい未来はないのに。
そんな相手のことを、親に事細かに伝える必要はないと思うけど…。
ホテルでのことがあるから、私も頑張ってみたいと思って一応は了承したけど、羽生くんだって、いつかもっと素敵な女性との出会いがあるだろう。
「Aさんは、色々考えすぎなんだよ。」
「普通だから。もう寝たら?」
病人のくせにしゃべりすぎだ。
「あ、Aさんも一緒に、ここで寝てくれる?」
「は?」
「夜中に容態が急変するかもしんねぇし。」
「……。」
「病人を一人にしておくのもさ、ね?」
何この確信犯的な笑み。
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鹿(プロフ) - みなみさん» そうなんですよ!はや九月。もうオータムもそこまでなので、そろそろお話を進められそう!^^ゆずの曲はまだ聞いたことがないのです。あまりCM見ないので… (2019年9月2日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - あっという間に9月になってしまいましたね。A.C.が近づいてきていますね。どんなプログラムなんだろ。今更ですが、ゆずの「SEIMEI」って、平昌のゆづの「SEIMEI」からとっていたりするのかしら?CMで耳に目にする度に考えてしまいます。 (2019年9月1日 23時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» しっぽも役に立つ日が来ます絶対(笑)トロントへは行かないですが、遠距離って書いてて楽しいかも^^思いやりが生まれます。羽生さんの中身をもっとしりたいなあ〜…。もちろんオフレコで(笑) (2019年9月1日 9時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - 更新ありがとうございます。深刻なのになんか面白い展開になってますね。ヒロインちゃん、トロントに行っちゃう?お母さんのOKというか、そういう人でないとゆづ本人が納得しないんじゃないかな。逆に、ゆづが選ぶ人はかなりの才色兼備な人ということ。ハードル高い! (2019年8月31日 18時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» そろそろみなみさんからコメントきそうだなーって思ってました!(^_^)私は密かに、結婚しないんじゃないかなーって思ってます。そもそも人を本気で好きになったことなさそう(笑)それにお母さんのオッケーが出なきゃだめっぽくないですか? (2019年8月31日 6時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2019年8月7日 17時