氷の国21

【眠りの国】1　★ ページ43

★ゆづサイド

「Aがいないとつまんなーい。」

「言うな。俺だって同じ気持ちだわ。」

無事自由の国と日取りを交わし、こうして正式な会談に臨むことになった俺と佳菜。

道中何事もなく、眠りの国へ無事入国…と言いたい所なのだが…。

「キャー！！ゆづ王子ー！！」

「……。」

関所に着くなり、ここでも熱烈な歓迎を受けて苦笑いする。

「ゆづは眠りの国でも人気なんだね。」

「今日は試合じゃないんだけどな。」

眠りの国もスケートが盛んな国だから、俺のことを知っていてくれるのは純粋に嬉しいことだ。

「その花の付いた衣装が原因じゃないかな。」

「これ？」

佳菜が怪訝な表情で俺の衣装に触れる。
今日は初夏らしく、花になれの衣装を着てきたのだが…。

「悪くないんだけど、可愛すぎるっていうか。」

「まっちーが用意したのをそのまま着ただけだし。」

会談時にはまた別の衣装を用意していると言っていたから、これはあくまで移動時のみで、後で着替える予定になっている。

「ま、いいけど。…で？昌磨は今どうなってるの？」

「あぁ、なんか三人でずっとゲームしてるらしいよ。」

入国手続きのために二人だけ別室に通される途中、こそっと内緒の話をする。

あれから何度か計画を遂行するためにテレパシーで会話したのだが、とにかく会談が始まらなきゃ動けない今、遊びながら待つという結論に達したようだ。

「でもさぁ、結婚渋って軟禁なんて昌磨らしいよね。」

「外出できないだけで、お城の中では比較的自由に行動できるみたいだよ。」

フェイやニジンスキーは特に綿密なスケジュールで行動してもらっているが、それ以外は絶対に部屋から出るなと伝えている。

「昌磨、本当に氷の国に来るのかなぁ…。王族に向いてないのは薄々感じてたけど、いくらなんでも身分をすてるとかあり得なくない？」

「それほど結婚したくないってことだよ。」

「…まぁその気持ちは分からなくもないけどね。」

…ん？
しみじみと言う佳菜に違和感を感じて斜め上を見る。

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