【贈り物】6 ☆ ページ12
「あ、俺そろそろ練習に行こっかな。」
ふとゆづ王子が思い出したように立ち上がって、ジャージのあるクローゼットへと向かう。
「あ、お手伝いします。」
一般開放の時間が終わったのかな?
私も今度こそソファーから離れて、ゆづ王子の後ろを付いて行くのだが、不意に部屋の窓の外を何かが横切ったような気がして立ち止まる。
そのまま視線を向けると、大きな鳥が向かいの屋根の上にばさりと止まったのが見えた。
「コウノトリ?」
ゆづ王子もそれに気付いたようで、行き先をクローゼットから窓際に変更して、そのまま外を眺める。
そうだ、最近親鳥の帰りが遅いことをお伝えしてみよう。
「ゆづさん。近頃コウノトリさん、雛のお世話をあまりしないんです。」
「雛の?」
「毎日帰りも遅いし…。」
「そうなの。」
カーテンを掴んだまま、ゆづ王子がぐるっと外を見渡している。
「今だって巣に戻らずに、屋根から雛を見ているだけです…。」
せめてエサを与えないと、お腹を空かせた雛がかわいそうだ。
私はそっとゆづ王子の隣に並んで、夫の腕に自分の手を添える。
「うーん…。」
「具合でも悪いのでしょうか。」
そんなコウノトリの様子を見ながら二人で考えていると、不意にゆづ王子が、ぽんと手を合わせてこう言った。
「あ、そろそろ巣立ちじゃない?」
…巣立ち?
どういうことかとお顔を見つめていると、コウノトリの視察へ行った時に聞いたんだけど…。と、優しくお話をし始めた。
それを聞く限り、コウノトリは雛の巣立ちの際、わざと突き放すような行動をとるのだそうだ。
「ではこの雛も、もうすぐ独り立ちということなんですね…。」
「雛っつっても、もう大きさはそこそこ大人だもんね。」
そっか…それはそれで寂しいような、ちょっと複雑な気持ちだけど、無事ここまで育ってくれたことはとても喜ばしいことだ。
「でも、コウノトリがこの子を私たちに授けてくれたんですよね。」
自分のお腹に手をあてて、じっとコウノトリを見つめていると、ゆづ王子も同じく私の手の上に重ねるように触れる。
タイミングも状況も、色んなことがあった中、こうして今幸せをかみしめることができているのは、彼らのおかげだ。
「そうだね。あの子たちみたいに優しく、時に厳しく。見守りながら子供を育てていこう。」
そうして、お互い繋がってゆく命を、感慨深く想っていた。
.
121人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鹿(プロフ) - 心菜さん» お話しに触れていただいていありがとうございます!ちょこちょこ休憩的な話を挟んでしまうがゆえに、とても長くなってしまうという…。次移行なので、またよろしくお願いします!!私は神戸インだよ!! (2019年4月23日 18時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» もうトロントへ帰ってそうですね^^でも乙女だったなあ〜。いろいろ乙女だった。今度はいつ会えるのでしょうか。ショーには出てくれるのでしょうか!あ〜仙台行きたい! (2019年4月23日 18時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
心菜(プロフ) - 王女ちゃん1人でのお参りでも、国民の皆さんに喜んで貰えて良かった(^-^)色々応募しても何にも当たらない私ですが、1日乗車券は御用意頂けました。そしてFaoi幕張土日参加です (2019年4月22日 20時) (レス) id: 15da2c977a (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - ニュースで笑顔が見られましたね。束の間の実家滞在になるのかな。帰国している間にいろんなお仕事が詰まってそうですもんね。とりあえず、いい表情だったなと思いました。ここのところ情報チェックする余裕があまりなく、乗り遅れています。ゆづが元気ならそれでよし。 (2019年4月20日 23時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» そんなに壮大な話にはならないんですけどね。ちょっと昌磨さんの話を書きたかっただけなのに、変な方向にいってしまって^^;これが終わったら試合です!ご本人はもう仙台についたかなー?! (2019年4月18日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鹿 | 作成日時:2019年3月18日 19時