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「母さんもそこを評価したからAさんを俺の結婚相手として承諾したんやろ?」と余裕のある笑みを浮かべながら彼女の方をチラリ、と見た。
婦人の方はそれ以上は何も言ってこなかった。
ーーちょっと待って、本人の意思も確認しないで話を進めないでほしい。
状況を整理しよう、今は黒崎家と会食に来ていて、そしたらそこの息子さんと結婚?私が?
(何も聞いてないんだけど…)
恨みの気持ちを込めて義母を横目で見ると私のことなんかお構い無しにいつもより若干高い声でひたすら黒崎さんのことを褒めちぎっていた。
「輝さん大学の方でもかなり優秀なんですってね!さすが黒崎家の跡取りだわ。貴方みたいな人が娘の婚約者だと考えると鼻が高いわ」
「とんでもない。こちらこそ九条家と婚姻関係を結べるだなんて喜ばしい限りです」
するとあら〜!と興奮を抑えきれない様子の義母をよそにテーブルに次々と料理が運ばれてくる。
どれも私がここに養子として来る前は食べたことも無かったような豪勢なフランスのコース料理。
そしてそれをこの場にいる私以外の全員が慣れた様子で口に運んでいるのを見てあぁ、やっぱり私とこの人達は住む世界が違うんだなって思わされた。
「…食べないんですか?」
ハッとして正面を向くと黒崎さんがフォークを使う手を止めていた。
彼の口角は上がったままで表情が崩れる気配は一向に来ない。
「い、いえ、そんなことは…いただきます」
慌ててフォークを手に取り口に運んでいく。
どんな味だったかはよく覚えていない。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「とても美味しい所ですわね。黒崎さんたちはよくここにいらしているのですか?」
「ええ。知り合いのシェフが経営しているので。大事な会食がある日はここって決まっていますの」
まぁ〜!とさっきも似たようなことを口に出していた義母と満足気な黒崎家の婦人。義母は自分より立場の下の者には強気だが上の者にはとにかく媚びまくる、という性質の持ち主だった。
こんなに媚び媚びだということは自分と彼女だったら自分が負けていると悟ったのだろう。
食事を終えて少しの談笑を楽しんだ様子の義母は「それじゃあ、」と両手を口の手前に合わせた。
「あとは邪魔者は退散して、二人だけでお話させましょう!」
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時雨(プロフ) - おもちもちもちさん» コメントありがとうございます!!そう言っていただけるとこちらのモチベーションにも繋がりますのでとても嬉しいです(; ;)もう少しでまた更新できそうですのでそれまでもうしばらくお待ちいただけるとありがたいです^^* (2020年2月17日 17時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
おもちもちもち - やっっっっべぇめっちゃ好きです…(俺の語彙力飛んでった←)更新楽しみにしてるんで、無理のない程度に頑張ってくださいね!(?) (2020年1月17日 1時) (レス) id: b8721ff069 (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - さくりさん» 返信遅れてすみません…!!コメントありがとうございます!!もう少ししたら更新が出来そうですので、それまでお待ちいただけるとありがたいです…!! (2019年12月5日 21時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
さくり - 初めてコメントをさせていただきます〜、さくりです!この話自分にドストライクすぎてヤバいです…!更新待ってます!! (2019年11月9日 17時) (レス) id: 11e1fd3e2e (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - ぽんずさん» コメント&通知登録ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです、これからも頑張りますね! (2019年7月15日 21時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
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