◆ ページ22
「送ってもらうのは、流石に申し訳ないので」
「そんなこと…」
「今日はありがとう、黒崎さん。楽しかったよ」
Aが引かずにいると黒崎は何かを言いたげな表情をしたがやがて諦めたように目を瞑ると、「…じゃあ、俺も迎え呼ぶわ」と呟いた。
「ではお先に失礼致します…行きましょう、お嬢様」
俺はAが黒崎に背を向いたと同時に彼女の背中に手をかざした。黒崎に見せつけるように。
Aは今は俺のもの、という気持ちを込めて。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「へぇ、そないなことがあったんですね。凄い偶然やねぇ」
「ですよね。私も驚いちゃいました」
皆が寝静まった夜、いつもの様に俺はAの部屋に来て、Aの今日の出来事を聞いていた。
色々と気になることもあったので本当は車内で聞いておきたかったのだが、急にあの女からの迎えの呼び出しをくらい、彼女とAを乗せた三人の空間では流石に言えるはずもなく、ただ気まずい空気が車内に流れていた。
結局今になって聞いているのだが、正直、黒崎とAが昔から関係があったなんて驚きでしかない。
だから、なのだろうか。Aが黒崎に対してはくだけた話し方なのは。
ふつふつと湧き出る嫉妬を抑えながら、俺はそのことを悟られないようにしながらAに向かって微笑んだ。
「それにしても、Aと黒崎様随分仲良さそうやったねぇ。敬語も外れてたし」
多分、本当はこんなこと聞かない方がいいのだろう。聞いてもきっと俺の望む答えは返ってこないしむしろ聞きたくなかったことを言われるだろう。
そう分かっているはずなのに、Aが他の男と何をしていたのか、気になって仕方がないのを俺はこの笑顔の裏に隠しているのだ。
「そ、そう、ですね…この前より仲良くなったとは、思い…」
「…A?」
何故か顔をほんのり赤くさせ、声がどんどん小さくなっていくA。
「どうしたん?何かあったんですか」
「え、えっと、いや、その…」
気まずそうにごにょごにょと話していたが、やがて俺から目を逸らしで微かな声でポツリ、と呟いた。
「黒崎さんに、告白、されたんです」
644人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
時雨(プロフ) - おもちもちもちさん» コメントありがとうございます!!そう言っていただけるとこちらのモチベーションにも繋がりますのでとても嬉しいです(; ;)もう少しでまた更新できそうですのでそれまでもうしばらくお待ちいただけるとありがたいです^^* (2020年2月17日 17時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
おもちもちもち - やっっっっべぇめっちゃ好きです…(俺の語彙力飛んでった←)更新楽しみにしてるんで、無理のない程度に頑張ってくださいね!(?) (2020年1月17日 1時) (レス) id: b8721ff069 (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - さくりさん» 返信遅れてすみません…!!コメントありがとうございます!!もう少ししたら更新が出来そうですので、それまでお待ちいただけるとありがたいです…!! (2019年12月5日 21時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
さくり - 初めてコメントをさせていただきます〜、さくりです!この話自分にドストライクすぎてヤバいです…!更新待ってます!! (2019年11月9日 17時) (レス) id: 11e1fd3e2e (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - ぽんずさん» コメント&通知登録ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです、これからも頑張りますね! (2019年7月15日 21時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ