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そんな時だった。突然九条家に養子として迎えられたのは。どうやら私の家と九条家は遠い親戚らしく、苦しい生活を送っている私を見かねて養子縁組をした
ーーというのが表向きの理由で本当のところは一応でも親戚がそのような目にあっていることを知っていて何もしなかった、ということを周りに知られると九条家のイメージが悪くなるから、らしい。
一般家庭で育った私にはよくわからない話だがとにかく彼らの世界では家と家の繋がりがとにかく大事らしい。
とまぁ、そんな理由なのだからそこに愛なんてもの当然ある筈もなく先程婦人が言ったような言葉で私を見下す義母と私に一切関心のない義父、及び九条家当主がいるばかりだ。
ちなみに義父もこの場に共にいるのだが本当に私に興味ないらしく一回も私を見ていない。
大学のお金も払ってもらっているし養ってもらっている立場だから贅沢なことは言えないけれど、正直彼らの養子になってから息苦しい毎日が続いているように感じる。
今私が来ている服は高級ブランドの物だが似合っているかどうかは正直分からない。
そんな庶民感丸出しな私がどうして黒崎家の人と結婚することになっているのだ。
私は目の前に座った男をチラリと見た。彼も私を見ていたようで当然目が合う。やばっと思い目を逸らそうとすると彼はまたニコッと笑みを浮かべた。
こういう時どうしたらいいのか分からずあはは…と苦笑いをしてから彼を改まって見つめた。
いかにも高そうなスーツをびしっと着こなして姿勢も常にピン、と伸ばしている。彼は私とは違って根っからの御曹司なんだなと実感させられる。
紫色の綺麗な瞳は彼の美しさをよりひきたたせる。
「本来なら息子の婚約者は私達が厳選することになっているのですが、息子がどうしても貴方が良いって効かないので、まぁ九条さんの娘さんなら、ということで了承しましたの」
養子ですけど、といつもなら傷つくであろう言葉も今はなんとも思わなかった。
それよりも、気になることがあったから。
「私がいい?」
「えぇ。理由は教えてくれませんが」
そういって婦人は横目で彼を睨むようにして見た。しかし彼はそんなこと気にしてないようでふふっと上品に笑ってみせた。
「まぁまぁ母さん、Aさんは九条家の一員となる前、この歳でたった一人で家計を切り盛りしてたんやで?俺は彼女はかなり優秀やと思うんやけどなぁ」
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時雨(プロフ) - おもちもちもちさん» コメントありがとうございます!!そう言っていただけるとこちらのモチベーションにも繋がりますのでとても嬉しいです(; ;)もう少しでまた更新できそうですのでそれまでもうしばらくお待ちいただけるとありがたいです^^* (2020年2月17日 17時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
おもちもちもち - やっっっっべぇめっちゃ好きです…(俺の語彙力飛んでった←)更新楽しみにしてるんで、無理のない程度に頑張ってくださいね!(?) (2020年1月17日 1時) (レス) id: b8721ff069 (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - さくりさん» 返信遅れてすみません…!!コメントありがとうございます!!もう少ししたら更新が出来そうですので、それまでお待ちいただけるとありがたいです…!! (2019年12月5日 21時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
さくり - 初めてコメントをさせていただきます〜、さくりです!この話自分にドストライクすぎてヤバいです…!更新待ってます!! (2019年11月9日 17時) (レス) id: 11e1fd3e2e (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - ぽんずさん» コメント&通知登録ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです、これからも頑張りますね! (2019年7月15日 21時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
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