占いツクール
検索窓
今日:16 hit、昨日:50 hit、合計:87,508 hit

ページ13

結局、次の日もまた次の日もスイセンは見つからなかった。けれど、俺はそれでいいと思ってた。見つかってしまったら、Aに会いに行く理由が無くなるから。

俺達はスイセン探し、という名目で他愛のない話ばかりしてた。でもそれが楽しくて、放課後に訪れるこの時間が、俺の最も楽しみとする時間になっていた。


そしてその日も花壇の近くにしゃがみながらAと駄弁っていた。

内容までは何年も前のことなのでほとんど覚えていない。

覚えているのは出会いの頃と、彼女といる時の心地良さだけ。


るす、というのは俺の本名ではないけど、そっちの方が本当の俺のような気がした。

ここでは、家に縛られない、ただの子供。俺にとってるすという名はそれを象徴する言葉でもあり、本来の意味以上に価値がある言葉でもあった。


Aにるすくん、と呼ばれるのが好きだった。家柄とか関係なく、俺自身を認めてくれている気がしたから。

学校でもこの幸福感は味わえない。クラスの奴らは親に仲良くしろとでも言われているのか、媚びているのが見え見えで、吐き気すらした。


けれどAは違う。Aだけはそのままの俺でいさせてくれたから。



Aは俺にとって特別な存在で、彼女に対する感情が“恋”だと気づくのは彼女に会えなくなってから。

その日、俺は運転手に放課後学校を抜け出しているのがバレた。当然その話は両親の耳に入り、こっぴどく叱られた。

そして、当たり前というように、それからAと会うことはなかった。

別れ際、また明日、と言ったのに。ごめんな、A。



そしてAと再会することになったのは大学に進学して三年の月日がたった頃。

そろそろ婚約者も目星をつけておけ、と両親から写真入りの書類を大量に貰った。

そこにいる人達は全員、それなりの富豪の家で、分かってはいたが結婚相手まである程度決められるんか、と半ば諦めかけながら適当にその書類の束をペラペラと捲っていた。


しかし、ある一枚の書類を見た瞬間、その手は止まった。


ーーAがいたのだ。姓が九条に変わって。


最初は名前が同じだけの別人かと思った。しかし彼女の顔つきはあの頃の面影が残っている。

そして、旧姓『望月』と書いてあるのを見て確信に変わる。

間違いない、彼女はAだ。


これは神様の悪戯だろうか。それにしては随分と嬉しい悪戯だ。自然に口角が上がるのが分かる。


「母さん、俺この娘がええな」

突然の甘味→←◆



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (165 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
643人がお気に入り
設定キーワード:歌い手 , luz , センラ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:時雨 | 作者ホームページ:***  
作成日時:2018年11月8日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。