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ガチャっと彼女の部屋の扉を閉めると暗闇に包まれた廊下を一人歩き始めた。


「…」


そして考える。

彼女に許嫁が出来たことを知った時、深い絶望感に襲われた。

彼女が誰かのものになってしまう。何て耐え難いことだろう。


最初は居場所がなく孤独な彼女に対する同情心からの行為だった。

それが今はどうだ、屋敷のものが寝静まった夜に、こっそり二人だけで話すこの時間を何よりも心待ちにしている自分がいた。


気づけば俺は、Aに惹かれていた。


しかし、この恋が実ることなどない。

何故なら彼女には婚約者が出来てしまったから。いや、それよりも明確な理由がある。



俺とAじゃ、身分が違う。


Aは養子とはいえど九条家の令嬢には変わりない。仮に今回の婚約が破棄になったところで彼女にはまた別の、相応しい身分の者が相手になるだろう。


その相手は使用人ごときの俺には有り得ないのだ。

だからこの想いには蓋をしてしまおうと思った。


それなのに、貴方は結婚は好きな人とがいいって言った。

今それを言うってことはつまりこの婚約について彼女もよく思っていないということで、それに安堵する自分がいた。

ほっとしたところで意味なんて無いのに。自分と彼女が結ばれることなんて無いのに。分かってる、はずなのに。

けど、貴方がそう言うだなんて、期待してしまうじゃないか、貴方ももしかしたらーーなんて。


この話になった時、少し怖かった。

Aがあまりにも落ち着いているから。『嫌だ』の一言も言わずにいるからもしかしたら彼女は乗り気なのかと不安にもなった。


けれどそういうのじゃないって分かってこれでまだAといられるって思った。


それは永遠なんかじゃないことなんて勿論分かっている。決して結ばれることなんてないってことも。


それでも俺は浅ましくも願ってしまうのだ。


まだAといたい。

まだこの夜が続いてほしい。



ーーまだこの恋を終わらせたくない。

追憶の姫君→←◆



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時雨(プロフ) - おもちもちもちさん» コメントありがとうございます!!そう言っていただけるとこちらのモチベーションにも繋がりますのでとても嬉しいです(; ;)もう少しでまた更新できそうですのでそれまでもうしばらくお待ちいただけるとありがたいです^^* (2020年2月17日 17時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
おもちもちもち - やっっっっべぇめっちゃ好きです…(俺の語彙力飛んでった←)更新楽しみにしてるんで、無理のない程度に頑張ってくださいね!(?) (2020年1月17日 1時) (レス) id: b8721ff069 (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - さくりさん» 返信遅れてすみません…!!コメントありがとうございます!!もう少ししたら更新が出来そうですので、それまでお待ちいただけるとありがたいです…!! (2019年12月5日 21時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
さくり - 初めてコメントをさせていただきます〜、さくりです!この話自分にドストライクすぎてヤバいです…!更新待ってます!! (2019年11月9日 17時) (レス) id: 11e1fd3e2e (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - ぽんずさん» コメント&通知登録ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです、これからも頑張りますね! (2019年7月15日 21時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:時雨 | 作者ホームページ:***  
作成日時:2018年11月8日 0時

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