拭えない罪悪感 ページ24
「え…」
ポツリ、と口から出た言葉はあまりにも間抜けな言葉だった。
センラさんの言葉に驚くあまり、冗談で言っているんじゃないかと一瞬考えたが、彼の表情を見てその考えはすぐになくなった。
いつもの優しい笑顔に包まれた彼はどこにもいなく、真剣な表情の中に見せるどこか苦しそうな瞳。
そしてあまりに直球すぎる愛の言葉。彼が本気で言っているのは容易に理解できた。
「ごめんな…こんなこと言われたって困るよな。抑えておくつもりやったんや。この感情にも、蓋をするつもりやった。
…けど、Aを前にすると、上手く気持ちのコントロールができなくなる…ほんま、情けないわ…」
そう言うセンラさんの声は若干震えていた。
最初は私の手首を力強く握っていた彼の手も、今となっては圧迫さが全く感じられないほど力が入っていなかった。
私の中でのセンラさんは、常にかっこよくて、優しくて、兄のような安心感のある人だった。
そんな彼と今の彼は大分かけ離れていて、苦しそうで、つらそうで。
何とかしてあげたい、という気持ちにはなるものの、その原因を作ったのは、私。
(私のせいで、苦しんでる)
ごめんなさい、センラさん。
貴方のことだから、こうなる前はずっと一人で抱え込んでいたんでしょう?
苦しんで苦しんで、苦しくてしかたなくて今その全てが溢れてしまったんでしょう?
「…ずっと苦しい思いをさせていて、すみませんでした」
「やめて、A。そんなこと、言わんといて。余計苦しくなるから」
「もうあなたに苦しい思いはさせません」
「……は?」
たった今私の脳裏に浮かんだ“それ”は、普通に考えて、やってはいけないこと、の分類に入るだろう。
けれど、こうすることでしか、彼の苦しみは、取り除けない。
「…センラさんのこと、受け入れます、私。あなたのことを好きになります。
…黒崎さんとの婚約は、解消します」
「……は、」
センラさんは驚いたように目を見開いた。
黒崎さんとの婚約はお互いの両親が絡んできているので簡単に解消出来るものでは無いと分かってる。
センラさんだってこの家の使用人なわけだし、彼と結婚、だなんてもっと難しいに決まっている。
けれど今はそんな現実問題から目を背けていたい。ただセンラさんの苦しむ姿を見るのが嫌だ。
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時雨(プロフ) - おもちもちもちさん» コメントありがとうございます!!そう言っていただけるとこちらのモチベーションにも繋がりますのでとても嬉しいです(; ;)もう少しでまた更新できそうですのでそれまでもうしばらくお待ちいただけるとありがたいです^^* (2020年2月17日 17時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
おもちもちもち - やっっっっべぇめっちゃ好きです…(俺の語彙力飛んでった←)更新楽しみにしてるんで、無理のない程度に頑張ってくださいね!(?) (2020年1月17日 1時) (レス) id: b8721ff069 (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - さくりさん» 返信遅れてすみません…!!コメントありがとうございます!!もう少ししたら更新が出来そうですので、それまでお待ちいただけるとありがたいです…!! (2019年12月5日 21時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
さくり - 初めてコメントをさせていただきます〜、さくりです!この話自分にドストライクすぎてヤバいです…!更新待ってます!! (2019年11月9日 17時) (レス) id: 11e1fd3e2e (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - ぽんずさん» コメント&通知登録ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです、これからも頑張りますね! (2019年7月15日 21時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
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