無垢な君は檻の中【utit】

◆ ページ27

自分の足で立っているのではなく、相手に寄っかかることでようやく“立つにも似た何か”の体勢を維持できる、人はこのことを依存と呼ぶのだろう。


自分の全体重を相手に預けてるから、その相手がいなくなれば、何の抵抗もなく地面に倒れてしまう。


ｰｰだから私はまふくんに寄りかかり続ける。



相手は人間一人分の体重をたった一人で支えているわけだから当然かなりしんどくなる。


ｰｰたとえまふくんが苦しい思いをしていたとしても。



本人に言っても絶対に認めないだろうけど、私には分かる。まふくんは私に縛られているって。


彼の家に行く頻度も日に日に増え、今では毎日のように足を運んではこうして図々しく居座っている。


いくら私のことを本気で心配していたって、こう毎日精神を病んだ人間が自分の部屋にいると、気も張るだろうし単純に疲れるだろう。


彼に迷惑をかけていること、自覚はしている。けど、これ以上の最善策なんて少しも見つけられない。



私が信じられるのはまふくんだけ。まふくんだけが好き。大好き。


そんな大好きな貴方を苦しませるのは不本意だ。すぐに彼を解放するべきだってのは分かっている。分かってはいるけど、したくない。



だってまふくんを失ったら、私はどうやって生きていったらいいの？


私にとっての光はまふくんだけで、それ以外は真っ暗な闇。光が途絶えてしまえばあとは何も見えない本物の闇と化してしまう。



彼が私のことを本気で救おうとしてくれた時、彼のことを天使だと思った。


綺麗な心で私のように惨めな人間を救済する、天使。


でも、当然だがまふくんは人間だ。どんなに天使そっくりでも本物の天使ではない。彼が人間である限り、心に汚れ一つないなんてこと、あるはずないのだ。


私のことが本当に大切でも、その裏に苦しい、と思う感情が隠れているはずなのだ。そう、“隠れている”だけ。


それが表に出てくることは無いだろうけど。だってそれが出てしまえば、まふくんの行為は“偽善”になってしまうから。

まふくんが本物の天使と違うところは、彼が人間ということだけ。


天使が為す善行は“慈善”だ。“偽善”なんて、本当の善行ではない。


まふくんは天使だから、天使であるが故に偽善は出来ないから、私を突き放すことが出来ないのだ。


天使は苦しむ、醜い人間のせいで。



「…ごめんね、まふくん」



ｰｰ貴方を天使にさせてしまって、ごめんなさい。

天使は善人を貫く/まふまふ→←天使は偽善者になれない/まふまふ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す