◆ ページ17
彼は「仕事お疲れ様」と話してきた。
背筋が凍った。何で彼は私が今まで仕事だったと分かるのだろう。そもそもここは住宅街の中にあるマンションだ、ここら辺に住んでいる人しかここは通らないはず。しかしあいにく私はこのマンションにまぁまぁ長く住んでいるが彼に会ったことはあの落し物を拾った時より前では一度もない。
だというのに彼は当たり前のようにニコニコ笑っているのが余計怖かった。
「あの…もしかして私の家を知っているんですか?」
「え、当然でしょ?彼女の家を知らないわけないじゃん」
…え、彼女?
彼は私のことを真っ直ぐ見つめている。ということは
ーー彼女は私?
「な、何言ってるんですか?」
「何言ってるってAこそ何言ってんの?」
その一言が私を再度恐怖のどん底へと落とした。私、この人に名前なんて言ってない。しかもいつの間にか敬語も外されてて、これじゃまるでほんとにーー
「まぁいいや、夜遅かったから心配だったんだよ。無事に帰ってきて安心した」
それじゃまたね、と手をひらひらさせて彼は暗闇の中へと吸い込まれて行った。
私は急いで家の中へと入ると鍵を閉めたのを確認して震える手で私の本当の恋人へと電話をかけた。
恋人に今までの事を打ち明けると彼はそれは完璧なストーカーだ、と非難した。そして私を守る為に外出する時は極力彼と行動するようにした。
けれどそれであの人からのストーカー行為がなくなるという訳ではなかった。彼といる時は出てこなかったが私が一人でいる時を狙ったかのように私に迫りよってきた。
もう我慢の限界だった。
私の部屋に彼を招き入れてもそれでもあの人から見られている気がして怖くて堪らななった。
瞳に涙がじわじわと溜まって大きな雫となって零れた。いつの間にか声も出てきて、歯止めが効かなくなった。
彼はそんな私を抱きしめて大丈夫だから、俺が守るから、と繰り返し言っていた。
とその時だった。
ガチャ、と玄関の方から音が聞こえた。そして誰かが私の家に入ってくる音が聞こえた。
心臓が大きくドキリ、と鳴った。彼の背中に回した手に力が入るのが分かった。
間違いない、鍵がかかっていた私の部屋を当たり前のように入ってくるのはーー
「お待たせ、A」
天使の顔した悪魔は美しい顔で口元に弧を描いた。
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可愛い後輩ちゃん - なるちゃんの口調そっくりすぎるwwwww🍥🍥 (2022年3月27日 13時) (レス) id: 28b1a8c3b0 (このIDを非表示/違反報告)
りゅー - まふまふさんの監禁系お願いします! (2022年2月13日 11時) (レス) @page25 id: 67f46d50a0 (このIDを非表示/違反報告)
月花月 - リクエストです、坂田さんの閉じ込める系お願いします (2020年7月6日 21時) (レス) id: fc0fb56c2a (このIDを非表示/違反報告)
蒼空@リス(プロフ) - いきなりですがリクエスト失礼します、志麻さんで服従系ヤンデレをお願いします!! (2019年7月28日 6時) (レス) id: 9910aa95ba (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - きゃらめるさん» 承りました!!元々、まふまふさん視点は考えてはいたのですが、都合上、本編に載せることが出来なかったので、載せる機会を与えてくださりありがとうございます…!!のろのろ更新ですが、精一杯頑張りますので、宜しければまた見て下さると嬉しいです〜!! (2019年2月14日 0時) (レス) id: 54c8766224 (このIDを非表示/違反報告)
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