WEST BOX《短編集》

○届かない声。《小瀧》 ページ2

『望！望！

ちょっと来て！！』




午前中のだるい授業が終わったとき、


教室のドアから少しだけ頬を赤く染めて

顔を出す俺の恋の相手。



彼女の要件はもう大体分かってる。




「はぁ、どーせまた重岡くんやろ」

『え、何で分かったん？』



お前をいつも見てるから、なんて

言えるわけがない。



「…勘や」

『えぇー！！』




望、勘鋭いんやな！なんて、呑気に笑う彼女。


俺の気も知らんと…





「はいはい。で？

重岡くんがどうしたん？」


『あ、せやった。

あんな？驚かんで聞いてな？』




あぁ、嫌な予感がする。


こういうときの勘だけは鋭いんよなぁ…




『し、重岡くんに告白されてん…』

「…え、？」




頭を鈍器で殴られたような、という表現は

まさにこういうことやと実感した。




そんな俺とは裏腹に、


彼女の横顔は幸せで満ち溢れ、

本当に“ 綺麗 ”という言葉が似合っている。





『そりゃ驚くやんな。

私も信じられへんねん//』






君に振り向いてもらえないことくらい、

分かってた。




俺の気持ちが止まらないのも…


とっくに分かってたよ。




それでも

可能性があるって、信じてた。





そんな俺の気持ちも知らず、

幸せそうに、嬉しそうに微笑む彼女。



君のその笑顔の理由が俺だったら…




そうなったら、どんなに嬉しいだろう。






でもそんなことを思ったってもう遅い。





「そ、なんや…

………おめでと」


『おん！ありがと！』




俺は自分の気持ちを殺して、君の幸せを願う。


そう決めた。





「幸せになれよ」

『もちろん！望もね？』



「…おう。あ、俺今日用事あるから

一緒に昼食べられへん…重岡くんと行ってき」


『へ、嘘やろ！？もぅー…

……ありがと』


「…どういたしまして」






せやから…




「っ、うっ、」







今だけは、視界がぼやけることを



許してください。






___Fin





○リクエスト
【しげまる。】様

*叶わない恋*


○担当作者
【凜憧】




なーたんさんではなくて申し訳ないです…

こんな私のお話でも
楽しんでいただけたら嬉しいです！

◎離したくない…〈重岡〉→←◎切なる願い…〈藤井〉

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