傷弾の鳥【出水公平】 (ページ22)

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20話ページ22

出水side

少し調子に乗ったような態度でAに言うと、堰を切ったようにポツリポツリと喋り出した。

『....大したことじゃないんだけどね。皆、市民を守るために戦ってる。私もそのつもりだった。

だけど、私は白いバケモノ...バムスターを親の仇と被せて撃ったの。自分の私利私欲のために力を使ったと思ったら、誰かを守るために力を貸してくれた太刀川隊のみんなになんか申し訳ないなって思っちゃって。』

「なんだそんなことか。」

『そんなことって...。』

つくづく優しいやつだなと思った。
仇を討つためにボーダーに入るやつなんて星の数ほどいるだろう。

太刀川さんはAの親がネイバーに殺されてることも知ってるし、それを思いながら撃ったことだって絶対に責め立てるようなことはしないだろう。

Aは制服にスカートが皺になるんじゃないかと思うほど握りしめ、顔は地面に向いていた。

はあーとため息を漏らしながら、出水はブランコから立ち上がる。立ち上がったと時にブランコからキーという音がしたせいか、Aの顔が上がった。

再び下を向かないように、出水は彼女の両頬に自分の手を添える。少しだけ驚いた様子で俺の方を不思議そうに見つめる顔を見て、堪え切れない笑みをこぼした。

「やっぱりお前バカだな。」

『....出水より賢いし。』

「たしかに俺はバカかもしんないけど、それ以上にお前は大バカもんだ。もう頼れって言ったこと忘れたのか？」

『それは...覚えてる。でも自分のために撃ったんだから、太刀川隊の皆に申し訳ないって思っただけで。』

「そんな小せえ事気にしてどうすんだよ。お前の撃った一発で、救われた人がいるってこと忘れてんじゃねーよ。」

再び驚いたようにAの目が見開かれる。
こいつ、責任感強すぎていつか死ぬんじゃねーかって心配になる。

「俺だって、守りたい人がいるからっていう自分本意な考えでネイバーを撃ってる。理由が違えど、皆そうだろ。だから、お前が気を落とす必要はねーの。」

『あれっ。出水って戦闘がカッコいいからボーダーに入ったんじゃ...。』

「あっ、えーっと....だな。そう！俺も市民守らなきゃって思ったからだ。だからそれも俺の勝手な欲！一緒！なっ！」

『ぷっ、あはは！必死すぎだよ、出水！』

さっきまでの表情が嘘なんじゃないかってくらいAは笑った。少し不服だが、この笑顔が見れたならいいやってそう思えた。