起きて…shp ページ9
今日は車で日帰りで温泉旅行。
帰りの高速で、俺が運転する横で楽しそうに歌っとったAさんの声が消えた。
ちらっと横目で見ると、こくこくと船を漕いどった。
散策した後に温泉入って、懐石料理食べて満喫したもんな。
左手で頭を撫でる。
暗い夜道を、なるべく起こさんようにBGMも小さくして走る。
早くベッドで寝かせたげたい。
「ん…」
「あれ、起きました?寝とってええですよ」
「…うん」
なんやろ、横目で見ると両手をにぎにぎしてたまに俺の方を見る。
え、まじでわからん。寝ぼけてんのかな。
「ショッピ君…」
「はい?車酔いしました?」
「…左手、余ってる?」
余ってる、とは。
「まあ、余ってるっちゃ余ってますね」
「…手、繋いでてもいい?」
あー、あー、そういう事…あー。
オートマで良かったー!!
幸い、パーキングに入れたりするまで左手いらんし、いるとしてもミッションより全然いらん。
「あっはは、ええですよ」
「んっ」
左手で手を繋ぐと、Aさんはまた眠った。
そっか、寂しかったんかな。
なんかええな、こういう夜のドライブも。
あかん、煙草吸われへん。
ま、いっか。
0時近く、Aさんの家に帰り着いた。
明日休みや言うてたっけ。
俺は昼から出る用件があって、Aさんが日帰りにしようと言ってくれた。
ほんまは、泊まりたかったんやけどな。
たった2〜3時間の用件で、この寝顔見れへんのかぁ。
「…起こしたくないよな」
いつの間にか繋いだ手は離れ、Aさんは助手席の窓にもたれとった。
今日は一日外、手しか繋いでへん。
いやー、あかんやろ。寝てるし。でもなぁ。
「…Aさん」
「……ん」
起きひん。こんな小声じゃ起きんって知ってる。
これは確認したかっただけかもしれへん。
「…連れて帰りますよ?」
彼女の右手を握り、自分の口元に持っていく。
連れて帰ったらあかんかなぁ。
あ、泊まる道具とかいるんかな。
しゃあない。どのみち起こさな、Aさんベッドで寝かしたらんと。
「Aさん、着きましたよ」
繋いだ手に指を絡めて少し引っ張ると、Aさんはようやく目を覚ました。
「…ショッピ君。ごめんね、ずっと寝てた」
「大丈夫っすよ、それより着いたんですけど…」
「あ…」
なんすか、その寂しそうな顔。
「俺んち、来ますか」
「…え?」
「昼間出るけど、その…俺の家で待っててくれたら、ええし」
「…うんっ、行く!」
あかん、顔緩む。
起こして聞いて良かった。
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作者名：芝谷
| 作成日時：2019年11月6日 19時
