【夢短編集②】 (ページ44)

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ci…隠し味は甘く(後編) ページ44

色とりどりのイルミネーションを見て、美味しいディナーも食べてチーノの家に帰る。
そしていつもなら、チーノはさっさと靴を脱いでベッドに寝転んで「あー疲れたー」なんて言うので…

「あ～、疲れ…た」

私は後ろからそれを引き止めるように抱きつく。
滅多にしたことない、多分付き合い始めた頃くらいしかやってない。
でもいつの間にか慣れてしまって、こうやって甘えるように抱きつくのは今では照れ臭くなっていた。

「A、どうしたん?」

「…チーノ、ありがとう」

「何や急に～、ネックレスそんな嬉しかったん?高いもんちゃうで?」

そうじゃないと、背中に顔をつけて頭を横に振る。

「似合うって言ってくれたの、嬉しかったから」

「あ～、あれな。うん。店員もアホよな～」

一向にこちらを向いてくれないチーノを見上げると、耳がほんのり赤い気がした。
トクントクンと速まる鼓動。

「チーノ…あのね?あの…」

「…ん?」

「…あの、こっち向いてほしい」

「…何で?」

「キス、したい…ので」

「…はあ～～～っ!!」

深いため息のような叫び声のようなものを上げて、チーノがその場に座り込んでしまったので私も一緒にしゃがむ。
顔面を両手で押さえているので、力づくで引っ剥がして見てやろう。

「何っ、すんねんっ!!」

「隠されたら見たい、やんっかっ!!」

「お前の、さっきの、可愛いのどこいってん!!」

「顔見せてってばぁ～!!」

「知らんぞ」

そう言って力を抜いたチーノの手を私はゆっくり顔から退ける。
目元は鋭いけど、頬っぺはちょっと赤い。

「お前さ、急に可愛くなるのなんなん」

「照れてる?」

「…せやな、照れとるわ」

弾むような軽いキスの後、チーノは眼鏡を外す。
その仕草に思わずコクリと唾を飲み、色づく吐息を我慢する。

「Aには俺の考えとる事バレバレやな」

「それは私もじゃない?赤を選んだのも、ネックレスも」

「当たり前やろ?どんだけ好きやと思てんねん」

「教えてくれたら良いのに…」

「かっこ悪なんの嫌やねん、やから口悪なったりするけど…ほんまはめっちゃ可愛いって言いたいんやぞ」

「今言って?」

「…ほんま、こういう時可愛えのずるいわ。知らへんぞ」

コートを脱ぎながらキスをしてくるチーノの頬に触れ、膝立ちをして上から口付ける。
今度は私がコートを脱がされて、チーノが膝立ちで唇を食んでくる。
そこが廊下である事を忘れて、倒れ込み、リップ音を響かせる。

お互いの全部を曝け出していく。