【夢短編集②】 (ページ27)

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tn…ほろ苦く甘い(前編) ページ27

職場の食事会の後、トントンが迎えに来るというので待っていたら同僚の男性に強引にLINEの交換をさせられてしまった。

「どないしたん、A。楽しくなかったんか?」

「そうじゃないんだけど…あのね?」

「ん?」

夜道を走る車の中、起きた事をトントンに話すと顔つきと共に空気が変わったのが分かった。

「さっきから鳴ってるけど、その…なんて返せばいいか」

「それを俺に言われましても」

期待した言葉とは裏腹に、素っ気なくいつもより低い声で冷たく返された。

「だって、どうしたらいいか分からなくて…」

「それはAが決めた事やろ、俺にそれを覆す事はできひんし、じゃあ返せば?とは言われへんやろ。俺、一応彼氏やで?」

「一応って…」

「いや知らんやん、他の男と連絡先交換されてそれ相談されてんねやで?逆で考えてみ?おかしいやろ」

「そんなつもりじゃ…交換したくて交換したわけじゃ…本当にどうしたらいいか」

信じてくれなくても、本当に望んでやったわけじゃない。
スマホを取り上げられて勝手にされた事で、何度も彼氏がいると話した。
職場も同じだし、今後を考えたらどうしたら良いか分からなくてトントンを頼りたかった。

話した事は彼を傷つけたかもしれない。
でも、黙っている方がもっと悪い気がした。

「…泣くなよ」

「ごめんなさい、ごめんなさい…」

ぽろぽろと溢れる涙がスカートの上にシミを作っていく。
冷え切った手で何度も涙を拭うけど止まらなくて、今すぐこの場から消えてしまいたくなる。

がくんっと体が揺れて、あぁ家に着いてしまったと、これで彼とは終わりかもしれないと、上を向く事ができない。

「…お前、明日休みやったよな?」

声が出ずに首だけを縦に振る。
シートベルトを外す音、そして私のも外されて。

「泣かんでええて」

頭を優しく撫でられて、頬に彼の手が触れてあったかくて、顔を見れば苦しそうな顔で。

「頭に血が上ってんやんか、ごめん…A、泣かせるつもりはなかったんやで?」

「…でも、ごめんなさい」

「Aがしたくてしたわけやないって分かってるつもりやねんけどな、俺が悪い」

「トントンっ…私っ」

苦々しげに微笑むトントンを見て、止まりかけていた涙が溢れる。
声にならない想いが涙になって零れ落ちる。

「連れて帰ってもうたやろ」

言われて周囲を見ればそこはトントンの家の駐車場だった。