【夢短編集②】 (ページ20)

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em…心配症彼女(目眩) ページ20

エミさんの家へ向かう電車の中、紙袋が潰れてしまわないように大事に抱える。
仕事が終わってから急いで作ったシフォンケーキ。
喜んでくれるかな。

「Aさん、すまん。電車で来させてもうて」

「大丈夫。それよりお仕事は?」

「その心配はせんでええよ、疲れたやろ?」

改札まで迎えに来てくれたエミさんが、私の頭を撫でてくれる。

「荷物持とうか?」

「これは自分でっ」

「はは、分かった」

エミさんの運転でお家まで行く途中、何かおかしいと感じた。
ふわふわする感覚、初めて体験する…何だろう。

車から降りる時、ふらついた。
ヒールのせいかと思ったけど、そんなに高いのは履いてない。

「…Aさん?」

「あ、大丈夫!大丈夫…です」

エミさんが助手席側まで回ってきてくれて、私の体を支えてくれる。
その腕に縋るように掴まるけど、なんだか視界が回って。

「…っは」

「Aさん、下向いたらあかん」

「エミさん…私…」

ぐるぐると視界は回り、頭の中がぐらぐらと揺れている感じがする。
今にも倒れてしまいそうで、不安で、気持ち悪くて。

「歩けます?」

言われて一歩踏み出すと、膝から力が抜けてしまい、エミさんが咄嗟に支えてくれてなかったらきっと倒れていた。
怖い、何で、何これ、治らない…。

「ちょっとごめん。玄関まですぐやから我慢してな?」

「えっ」

エミさんは荷物を私から奪うように取り、そのまま横抱きにされた。
軽々と玄関まで運ばれて、靴を脱がされ、また抱えられて。
普段そんな事しないのに、エミさんはドアを足で乱暴に開けていく。

抱えられたまま入ったのは、エミさんがいつも寝てるクイーンサイズのベッドが置いてある寝室で。
そこに座らされて上着を脱がされ、何やらテキパキと事が運んで行くのだけれど、もう頭がくらくらして。

「はい、寝ましょう」

「…え?」

ベッドに腰掛けるエミさんに頭を撫でられる。

「軽い目眩やろな、寝不足じゃないですか?」

言われてみれば、昨日ケーキを作るのに夜更かしをしてしまった。

「…多分。ごめんなさい」

「大丈夫、眠れば落ち着きますよ」

「…そばに、いて下さい」

エミさんのジャケットの裾を引っ張ると、その手を取り優しく握ってくれた。

「おるよ、Aさんが起きるまでちゃんとここにおるよ」

「…怖かったです」

「はは、もう大丈夫やから。ゆっくり休み?」

頭を撫でられる心地良さに、私はすぐ眠りについた。
起きたら、一緒にケーキを食べよう。