クロスロード (ページ2)

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ごめんねページ2

［ R.Yamada side ］

「ごめんなさい。心配かけて」

Aが病院に運ばれた。
そして唯一面会を許されたのが俺だった。

きっと、誰よりも近くで今までたくさんの壁を乗り越える彼女を見てきたから、

『いつものように救い出してあげてほしい』

直接言葉にされてはいないが、そんな願いが事務所の人にはあったのだと思う。

「聞いた。収録のこと」

「……ファンの子を泣かせた。悲しい思いをさせた。私を応援してくれてるせいで」

「…」

「みんなにもあんな怖い顔させた。私だけの傷なら乗り越えられる。でも、今回は、ちょっとキツイ」

「…A、」

「………ねぇ、涼ちゃん」

違う。今までと、なにかが違う。

俺の名前を呼んでようやくこっちに振り向いた彼女の表情を見て思った。

次に告げられるであろう言葉を聞くのが、怖くて仕方がない。受け止められる気がしない。

「………ごめん、っもう限界だ」

その瞬間、彼女のビー玉みたいに綺麗な瞳から大粒の雫が幾度となくこぼれおちた。

こんなにずっと一緒にいるのに、初めて見た彼女の涙だった。

大丈夫だ、なんて言ってあげられなかった。
何度だって乗り越えてきたじゃないかなんて、無責任なこと言えなかった。

一度折れた骨が強くなるようにハートが強くなっていたわけじゃなかった。痛みに慣れただけで傷がついて弱ったまま立ち上がらせてしまっていたのだと、気づいてしまった。

「…もういい、わかったから」

「……ごめん、なさい」

「…もういいよ、っもういい」

彼女の涙を見てられなくて、目の前のAが今にも消えてしまいそうで、ギュッと強く抱きしめた。

ごめん。守ってあげられなくて、ごめん。
心の中で何度も何度も繰り返し謝った。

知らぬ間に、俺たちは彼女をこの世界に縛り付けていた。
誰のためでもない、自分たちのために。

俺の言葉に子どものように泣き続けるAを抱きしめながら、俺自身も心を決めた。

もういいよ。
いつまで頑張ればいいんだろうなんて答えのない問いを考えるのは、もう終わりにしよう。

Aには、ただ、笑っていてほしいんだ。

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