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「『中島敦』は、山月記、李陵、光と風と夢などの代表作で知られる有名小説家ーーいわゆる文豪よ。特に山月記なんかは、高校の教科書にも採用されてるわ。」

灰原による簡単な解説を聞いて、三人は興味が湧いたらしい。「どんなお話なの?」と声をあげたのは、歩美だ。

「そうね……。私から説明するのは簡単だけど、どうせなら自分で読んでみた方が良いと思うわ。難しい作品だけど、何か感じるものがあると思うから。」
「じゃあ今度、学校の図書室で探してみましょう!」
「さんせーい!」
「俺も!」
「コナン君も、一緒に探しませんか?」

光彦がコナンに問うが、コナンは断った。コナンは「コナン」になる前、高校の授業で山月記を取り扱っており、ゆえに表現の意図やその他諸々を理解してしまっているのだ。きっと、文学作品に触れるという彼らの新鮮な経験とそこから得るものーー灰原の言葉を借りれば「何か感じるもの」ーーの邪魔になってしまうだろう。それは、あまり気持ちの良いことではない。

「僕と同名の作家さんも居るんだ……」

ぼそりと声を漏らしたのは、白い少年・中島敦だ。
彼もまた“偶然”有名作家と同じ名前だというのだろうか。ーーけれど、見た目からして彼は十代後半。『中島敦』の名くらい、知っていて当然ではないだろうか。また仮に本人が知らないにしても、周囲の人間から指摘されることも少なくないとは思うのだが……

「敦は、出自がやや複雑ですからね。」

まるでコナンの考えを読んだかのように言ったのは、アーサーだ。それも、声を潜めてコナン以外には聞こえないようにして。

「ーー複雑?」
「其れ以上は、幾ら職場の先輩でも、僕の方から気軽に話す訳には行かないです。」

プライバシーってやつです。
そう言われてしまっては、必要以上に追求するわけにもいかない。

アーサー・コナン・ドイルに、中島敦。灰原の言う通り、本当に不思議な縁だ。文豪と同姓同名という偶然に加え、その二人が同じ職場だという偶然。出来すぎていると思わないでもないが、後者に関してはある意味では必然とも思えてしまう。敦の方は分かっていなかったが、世間から奇異の目で見られる者は、得てして同じ仲間と集うものだ。まあ、彼らがそうであるという確証がある訳ではないが。
ふと、二人以外にも居たりして、などと、特に根拠もなくそう思ってしまった。

ーー実はコナンの予想は当たっているのだが、本人がそれを知るのはまだもう少し先のことである。

八→←六



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美園(プロフ) - 今日はじめて見ましたがとても惹き込まれました! (12月24日 19時) (レス) id: 69d991c9f1 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 大好きな作品です…! (6月29日 17時) (レス) @page1 id: 7b1be7f011 (このIDを非表示/違反報告)
むる - え!?!?!?!更新なくて残念です泣泣泣めっっっちゃくちゃ気になります………すごく読みやすくて設定も凝っててめちゃめちゃ良かったです。 (2022年8月14日 2時) (レス) id: 6ed738b467 (このIDを非表示/違反報告)
ししゃも(プロフ) - 続きが凄く読みたいです。更新お願いします! (2022年7月27日 8時) (レス) @page43 id: 4d9c9f1a17 (このIDを非表示/違反報告)
舞琴(プロフ) - めちゃ続きが読みたいですっ!!!!更新待ってます!!!!!! (2022年4月23日 23時) (レス) id: 6e4f314873 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:菫色 | 作成日時:2018年4月29日 20時

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