事件 壱 ページ32
「ど……ドイルさん! 澤田氏が!!」
悲鳴が劈くと同時に、会場に騒めきが起こる。それは敦も例外ではない。寧ろ、つい先刻言葉を交わした彼が突然倒れたことに、ひどく動揺していた。
彼とは長い付き合いだという小林氏は、信じられないとばかりに目を見開いている。
「救急車を呼べ!」
そこで、一人の男性の声が響き渡った。見れば、先程の話の中で話題になっていた、毛利小五郎とか云う探偵である。彼の声に、給仕の一人が弾かれたように「はい!」と会場を出て行った。
それを確認して、毛利は徐ろに澤田氏の方へ向かう。敦達の方からでは、人が影になっていて何が起こっているかは分からないが、恐らく息や脈拍を確認しているのだろう。周囲に沈黙が降りた。
「ふむ……。」
「ドイル、さん?」
考え込むような素振りを見せるアーサーに、敦は思わず彼の名を呼んだ。
「確証は無いですけど、澤田氏は大丈夫だと思うですよ。」
「え? 何故、ですか?」
その遣り取りは、側で立ち尽くす小林氏の耳にさえ届かない程、小さな声で交わされた。当然、周囲の人間が気づくこともなく。
「原因が持病だとかの類に有るとしたら、診察もしていない僕には分からないです。けど、もし毒物によるものだとしたら……大丈夫です。」
アーサーは、そう言い切った。
「取り敢えず今は、救急車の到着を待つしか無いですけど。」
答えになっていない、と。そう思った。そうかもしれないけれど、そうでは無い。敦は、さらに「どうして、分かるんですか?」と質問を重ねる。するとアーサーは、暫し逡巡して、そして口を開いた。その右手には、いつの間にやら赤い硝子玉が握られている。
「僕が犯人を知っているから、ですかね。」
アーサーが、表情を変えることなく云った。
丁度その時、存外早く、数台の緊急車輌の
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美園(プロフ) - 今日はじめて見ましたがとても惹き込まれました! (12月24日 19時) (レス) id: 69d991c9f1 (このIDを非表示/違反報告)
彩(プロフ) - 大好きな作品です…! (6月29日 17時) (レス) @page1 id: 7b1be7f011 (このIDを非表示/違反報告)
むる - え!?!?!?!更新なくて残念です泣泣泣めっっっちゃくちゃ気になります………すごく読みやすくて設定も凝っててめちゃめちゃ良かったです。 (2022年8月14日 2時) (レス) id: 6ed738b467 (このIDを非表示/違反報告)
ししゃも(プロフ) - 続きが凄く読みたいです。更新お願いします! (2022年7月27日 8時) (レス) @page43 id: 4d9c9f1a17 (このIDを非表示/違反報告)
舞琴(プロフ) - めちゃ続きが読みたいですっ!!!!更新待ってます!!!!!! (2022年4月23日 23時) (レス) id: 6e4f314873 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:菫色 | 作成日時:2018年4月29日 20時