03/N ページ5
｢え、花見？｣
｢そうそう。
里山のテッペンの千年桜んとこで｣
その人は新聞を折り畳みながら
オレと息子の潤君に『今日は学校サボっちまおうぜ』と大きな栗色を細め笑顔を向ける。
いつもなら朝食の支度を任されてるオレと潤君が一番乗りに起きてくるのに
珍しく先に起きていた翔さんが定位置に腰掛け、『おはよう』の前に言った言葉がコレ。
｢イヤ…、千年桜って。
あそこ山のテッペンよ？
荷物持って登ってくって
なかなかの鬼畜な所業だと思うけど｣
千年桜はこの街を見下ろす様に小学校の裏山の頂上で咲き誇る大きな桜の木。
子供の頃は友達と遊びに行ったけど
殆ど手を入れられていない山道を登ってくのはなかなかにしんどくて
わざわざあそこまで桜を見に行く人間はまずいない。
種類が違うのか、
町中で咲き誇るソメイヨシノが散る頃に咲き始める千年桜は、
長いこと美しい姿を楽しませてくれるから
この街の住人に愛されていて、お年寄りなんかはこの時期よく山に手を合わせてる。
｢だーいじょうぶだろ。
ニノはまだ高校生だしおれ達は物の怪だし。
多少傾斜がキツいくらいどうってことないだろ｣
リスみたいに白い歯を覗かせた翔さんがビシッとオレを指差した。
｢それにニノ。
今日のお前には気晴らしが必要だ。
昨日の雅紀のハナシで
眠れなかったんじゃないのか？｣
二の句がつけず身じろぎひとつ出来ないオレを見て苦笑すると
翔さんは一度大きく溜息をついてポリポリと頭を掻いた。
｢一緒なんだよ、おれも。
今日はヘンな時間に目が覚めちまった。
気分乗んないし大学行きたくないし。
ぱぁっとみんなで騒ぎたい気分なんだよ｣
おれもニノも気晴らしが必要じゃね？
綺麗な顔で茶目っ気たっぷりにウィンクした翔さんになんにも言えずにいると
それまで黙っていた潤君がオレの肩にそっと手を置いた。
｢俺もあの後やる気になれなくて源氏物語の現代語訳の続き、やってないんだよ。
花見行くなら丁度いいや｣
それに俺も今日のニノには
学校なんかより
花見の方が必要だと思うけど？
｢潤君……｣
確かに２人の言う通りだ。
昨日の智の話もまだ頭の中で整理出来てないし、学校にはヒルコ達がいるし。
正直今日はなんにも考えず
頭の中空っぽにして、みんなでバカやって楽しみたい気分だった。
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華美月(プロフ) - いつも楽しく見させてもらってます！華美月と申します！昔から読ませて頂いていて、大好きな作者さんの1人です！更新してくださることを楽しみに、気長に待ってます！(*^◯^*) (2022年10月15日 22時) (
レス) id: c5d2d1bf23 (このIDを非表示/違反報告)
あさり(プロフ) - どりさん» どりさーん、わはは、私も閉鎖する時、よくもこれだけ書き散らかしたなと笑っちゃった。お話、結構な量になっちゃっててびっくりしました^^;こちらとBINARYだけは書けれるところまで書こうかなぁと思ってるんですがなかなかできず、でもゆっくり書いてきますね^^ (2021年2月1日 11時) (レス) id: 76457366b6 (このIDを非表示/違反報告)
あさり(プロフ) - ちょびさん» ちょびさーん、ご無沙汰してます。私も以前ほどこちらに来れなくて^^;なかなか書く時間もなく本当にのんびりとしか書いてませんが、また覗いてくださると有り難いです。更新頑張りますね^^ (2021年2月1日 11時) (レス) id: 76457366b6 (このIDを非表示/違反報告)
あさり(プロフ) - ちえさんさん» こちらこそですー^^更新遅いし単発でしか活動できませんがのんびりお付き合いいただけたら嬉しいです^^ (2021年2月1日 11時) (レス) id: 76457366b6 (このIDを非表示/違反報告)
あさり(プロフ) - 貴雅さん» お久しぶりです！んふふー、ホントに長らく楽しんでくださって有り難うございました^^初期からのお付き合いですからね〜。ここまで遊んでくださって感謝しかありません。おうちとBINARYはゆっくりもう少しだけ書こうかなと思ってるのでまた覗いてやってください (2021年2月1日 11時) (レス) id: 76457366b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あさり
作成日時：2020年10月9日 21時
