14.八咫烏と甘い涙｡/N ページ15
｢え…？今の…なに？｣
｢狐が…守護者じゃないのか…？｣
オレの眼の前には何十羽ものカラスの群れ｡
襲いかかろうとした潤君から守るように、オレの周りを取り巻いてる｡
｢このカラス、脚が三本ある……｣
しかも見慣れた筈の漆黒の鳥よりもずっと大きい｡
コイツら…普通のカラスじゃない｡
｢……
潤………｡
おれ達、マズイ相手に喧嘩売っちまったぞ｡｣
｢あれ？
翔ちゃん、大ちゃんのこと知ってんの？｣
｢知ってるもなにも……｣
“親友だもんねぇ、俺達……”
言いかけた翔さんの声を遮るように、月明かりに溶け込むような静かな声が響いた｡
｢さ…とし？
いつの間に……｣
オレからすぐ眼と鼻の先｡
木製の引き戸によっかかって、智は腕組んでじっと翔さんと潤君を見つめてる｡
気配なんて全然感じなかった｡
こんな近距離にいるのに｡
足音一つ聞こえなかっただなんて……｡
｢ニノ｣
床に這いつくばったままのオレに、智はしゃがみこんで視線を合わせる｡
三本脚のカラス達は畏怖を払うように、智を中心に控えているようにも見えた｡
｢大丈夫？
こんなに震えて｣
｢へっ？えっ…、大丈夫…だけど…｣
｢立てそう？｣
｢う、うん……｣
オレを支える手は大きくてあったかくて、安堵感からまた眼がしらが熱くなってくる｡
ぽろりと零れ落ちた涙を、智の赤い舌がペロッと舐め取った｡
｢さ、さささ智!?
お前急に何すんだよ!!!｣
涙も引っ込むわ!!
｢ニノの涙は甘くて美味しいなぁ｡
さすが俺の
でもニノは泣いてるより、笑ってる方がずっと似合うよ？｣
くしゅくしゅ笑ういつもの笑顔に、張り詰めていた緊張が一気にほぐれてまた涙が滲む｡
｢だって…怖かったんだもん｡
アイツ、オレのコト喰うって何かと牙剥くし……
それに相葉さんもアンタまでワケわかんない事言い出すし……｣
ちょっと困ったように笑った智が、細い指でオレの涙を拭うとそれをまたぺろりと舐める｡
｢全部終わったら説明するから｡
大丈夫｡
じいさんとの約束だから、ニノは必ず俺が守る｡｣
｢智？
じいさん…って、オレのじいちゃんのこと？｣
オレの質問に答えることなく、智は煙草をふかしてる翔さんに向き直った｡
纏っていた柔和な雰囲気はなりをを潜め、細い体からは肌がヒリつく程の威圧が満ち溢れた｡
15.綺麗な薔薇は棘だらけ｡/N→←13.まさかの意気投合？/N
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1215人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あさり
作成日時：2014年6月17日 23時
