12.困った時は任せなさい!/N ページ13
｢ニノちゃん？
アレレ？
ひょっとして泣いてる？｣
｢あい、ば…さん？｣
相葉さんはニコニコ笑いながら跪くと、
オレのほっぺたを自分のパーカーの袖でぐしぐし拭ってくれた｡
｢も〜、どうしちゃったの？
こんな涙でぐしゃぐしゃの顔してさ｡
何があったか話してみてよ｡
この相葉チャンが力になってやるからさ｡｣
『ね？』って笑ってくれた顔がいつもと同じだったから｡
優しくて、お日様みたいな笑顔だったから｡
なんだか急に安心して堰を切ったようにまくし立てた｡
｢オレ…、しょ、さんに頼まれた本…渡したくてっ…この店開けたら…
潤君も…、いっしょで…
潤君っ…、犬神で…ッ…
オレのことッ…櫛…なんとかの…姫だから…食べるって…っ…｣
クソッ!!
涙で喉が詰まって喋れない上に、頭がこんがらがっててまともな説明が出来ない｡
これじゃ相葉さんに伝わらない｡
オレに起こったこと、絶対に信じて貰えないよ………｡
｢う…えっ……｣
情けなくて｡
悔しくて｡
その上凄く怖くて｡
また込み上げてきた嗚咽が零れそうになると
相葉さんは笑いながら頬を伝うオレの涙を拭った｡
｢もう、ニノちゃんってば泣かないの!!
ニノちゃんが悲しそうに泣いてると、オレが大ちゃんに怒られちゃうじゃない(笑)｣
｢……さ…とし？
なんで…？｣
相葉さんは安心させるようにオレの頭を撫でた後、潤君に向き直った｡
いつもとおんなじ優しい笑み、浮かべてんのにさ｡
ざわりと空気が揺らいで、相葉さんが纏う雰囲気が一変する｡
｢…このションベン臭い妖気の主はそこの綺麗なお兄さんじゃなくて｡
ワンコ君…、君…かな？｣
｢言ってくれるね｡
アンタ、何者なの？
翔さんが張った結界、いとも簡単に破るなんてフツーじゃないよね？｣
口元を歪めた潤君の後ろには、煙管をふかしてる翔さん｡
気だるげな様子で相葉さんを大きな栗色の瞳に映すと、煙草の煙をぷかぁって吐き出した｡
｢お前…、『猫』か？
そんでニノの守護者なのか？｣
吐息交じりに舞う翔さんの艶っぽい声｡
ふんわり笑ってみせた相葉さんに、翔さんが吐き出した煙草の煙が巻きつく｡
｢ちょっとぉ｡
やめてくれないかなぁ？
最近じゃ副流煙の方が体に悪いって聞くし｡｣
ぽっ、ぽっ、と音を立てて相葉さんの周りに灯った幾つもの明かりは、
白い煙幕を舐めるようにして次第に大きな炎へと成長していった｡
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作者名：あさり
作成日時：2014年6月17日 23時
