11.ミラクルマンの登場/N ページ12
｢ヤ…、ヤダ…!!｣
潤君の牙があやしく煌めいて、押しのけようとしたオレの手に唾液がぽたんと落ちた｡
……コイツ、本気だ｡
本気でオレのコト食おうとしてる…!
｢ふ…ざけんな!!!!｣
潤君の鳩尾を思いっきり蹴りあげると、
オレは自分より背の高いソイツを押しのけて這い出した｡
｢ヤ…ヤダ…、なん、で……｣
恐怖から脚に力が入んなくて、カッコ悪く番台からずり落ちる｡
すりむいた肘からは赤く血が滲んでる｡
｢あぁ…、この芳醇な血の香り｡
空きっ腹にきくねぇ……｣
にんまりと笑う口元には大きくて白い牙………｡
どうしよ…
どうしよう……
腰、抜けて…立てないよ……｡
何処か夢見心地だった潤君は嬉しそうに笑うと
オレを見てゆっくりと舌舐めずりをした｡
｢ニノ、怖がんなくていいから｡
……痛いのなんてほんの一瞬｡
余すことなく、喰らい尽くしてやるからな｡｣
｢ヤダ………｣
ガクガク震えながら
｢ヤダ…、お願い…、助けて……｣
潤君の綺麗な黒い瞳を見つめて
｢お願い…、オレを…食べないで……｣
お尻で後ずさりしていく｡
｢だーめ♪｣
｢助けて!!助けて!!!｣
必死で床を這いつくばって、出口の木戸に辿りついたのに｡
｢な…んで!?
どうしてなの!?
なんで開かないんだよ!!｣
オレが何をしようが、古い木製の戸はカタカタと音を立てるだけで
強力な接着剤でくっつけたようにビクともしない｡
｢『結界』ってヤツ？
張らせて貰ったよ｡
悪いけどニノはもう、ここから出られない｡
おれも潤が可愛いからさぁ｡
アイツの食事に邪魔が入らないようにって思ってね｡
ちょっと細工しちゃった｡｣
『ごめんね？』って軽くウィンクした翔さんに
ぽろぽろと涙が零れ落ちる……｡
ヤダ…、ヤダよ……
こんな…、ワケわかんないことで死ななきゃいけないなんて……
｢ヤダ、ヤダ、ヤダ!!!
助けて!!!助けて!!!!!｣
｢いくら大声出しても無駄だよ｡
外にここの声は漏れない｡
おとなしく諦めて潤に食べられ……｣
ガラガラガラ…
木戸が開いて、少しひんやりした夜風が涙にぬれる頬を撫でた｡
｢へっ…？えっ…？」
｢たっだいま〜♪
ニノちゃん家の方にいないから絶対こっちだと思って…って。
アレ？
どうしたの？この空気感｡｣
絶対に破れないって言ってた翔さんの張った結界を
いとも簡単に破ったのは
人のいい笑顔を浮かべる、相葉さんだった｡
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作者名：あさり
作成日時：2014年6月17日 23時
