救世主 ページ40
ガリガリと嫌な音を立てながら、トラックは進んでいく。
「……っくっそ!ここじゃない!!」
バンパーを止めているらしき金具はあらかた外したが、どうにも、まだどこかで引っかかっているのか、緩む気配がない。
焦りと緊張と車のエンジンの暑さで、ぼたぼたと額から汗が流れ落ちる。
端から端まで探し回るが、もう素人知識では限界だった。
「こうなりゃヤケだ……っこの!!」
トラックに背をつけ、足で全力で車を押す。
だが、その程度で動くのであれば、最初からこうはなってない。
こんな時、松田なら、萩原なら……!
ボンネットの中を再度覗き込み、金具かどうかもはや分からないが、取れないかと掴んで引っ張る。
(時間かけてられないんだ……早く…早く!!)
焦りで、金具で手を切ったことにも気づかなかった。
「よォ大将!待たせたな」
不意に耳に届いた声。
そして、今朝も聞いたエンジン音。
「…ゼロ、松田、萩原!!」
「いいのか?入校者の車の運転は禁止されてんのに…」
「あん?エンジン音がうるさくて聞こえねぇなァ」
いつもの調子の松田に不思議と、どっと気が緩んだ。
「あーあ、Aちゃん顔ドロドロになっちゃって」
「……んな事より!止めれんの!?」
茶化す萩原に必死に叫ぶ。
後部座席に座っているゼロも、なにか話しかけていた。
「おい!A!」
「何、松田!今軽くパニックってるから手短に」
「なんかに掴まれ!!!」
言い切るより先に、松田から叫ばれる。
咄嗟に、トラックの開閉口にしがみつくと、ぶつかるような音と同時に、大きくトラックが揺れた。
「うわぁッ!?何だよ!?」
突然の衝撃に、心臓がかつてないほどバクバクと鳴っている。
「Aちゃん!大丈夫!?」
「トラックとFDとじゃ重量に差があり過ぎるんだ…!おい!どーすんだよ!」
班長の怒号が耳に届く。
何をするつもりなのか、パトランプを手にした松田は萩原と顔を見合せて、互いに口角を上げた。
「おい!サンルーフを開けろ!!
A!いいか!絶対に顔上げんな!!」
「は?!それってどういう……」
状況が理解できなくて、そう叫び返そうとした。
「は」
FDが、飛ん……!!?
頭が理解するよりも先に、反射的に頭を抱えこむ。
ダメだ、パニックで状況が理解できない
ランプを踏み台に、綺麗に乗用車の上をFDが背面で飛び越え、それが真上に来たタイミングで、伸ばされた松田の手がサンルーフの縁を掴んだ。
「よォ、調子はどーだ?Aちゃん?」
「………最高だよ畜生!遅いわ!」
目の前でニッと笑う松田に、泣きそうになりながら悪態で返すのが精一杯だった。
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しゃ〜け(プロフ) - 早桃さん» 早桃さん、コメントありがとうございます〜!!!面白行っていただけてもうめちゃくちゃ嬉しいです!!頑張って更新していくので、今後も是非よろしくお願いします〜!! (2022年12月27日 1時) (レス) id: 8454d3df8d (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - すっごい好きな作品です!面白い!これからも無理せずに更新頑張って下さいね!応援してますぅぅぅ! (2022年12月26日 12時) (レス) @page37 id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゃ〜け | 作成日時:2022年12月19日 2時