Shadow Angel #10 ページ10
「さっきおれが触れた時、『痛くない』と言っただろう。……相手と接触した時に、相手の痛みが主へと流れ込んでくるのではないのか」
自分が望む望まざるには関わらず。
触れてしまった時点で、否が応でもその痛みを引き受けなければならないのではないか。
……そうでなければ、たかが腕を掴んだくらいであそこまで怯えたような反応はしないはずだ。
唖然とした表情を浮かべたまま、彼の言葉を聞いていた彼女は迷うようなそぶりを見せた後に、小さく、遠慮がちに頷いてみせた。
「……そう、です」
自分が痛みを引き受けて、それで相手の笑顔が見られるなら我慢しようと思えた。
嬉しそうな顔で、ありがとうと言われた時が一番嬉しかった。
必要とされている気がしたから。
私にしかできないことがあると、
私の存在意義を見出すことが出来たから。
「私にとっては、他人のために影繰りを使うことが当たり前でした。小さい時からそうしてきましたし、心の底から私の力を求めてくれる人がいたから。……それが嫌だったわけじゃないんです。でも、」
いつからか、流れ込んでくるその痛みが怖くなった。
彼女に流れ込んでくる痛みは、何も肉体的な怪我の痛みだけではない。
その人が抱える心の傷もまた、同じように流れ込んでくる。
骨を折った、
階段から転げ落ちた、
そういう人たちの痛みは、我慢できた。
……でも、心の傷までは引き受けきれない。
親から捨てられた、
その悲しさを、虚しさをどうやって引き受けられるだろう。
大切な人を亡くした、
その孤独を、悲しみをどうやって引き受けられるだろう。
──心の痛みに触れるたびに、何度意識を手放しただろう。
その度に、他人に触れることが怖くなった。
触れてしまえば、どんな痛みが流れ込んでくるか分からないから。
弱音を吐いてしまいたかった。
私には、すべてを背負うことは出来ないと。
もうこれ以上、人の痛みなど抱えられないと。
誰かに甘えたかった。
もう十分頑張ったと、そう優しく抱きしめてほしかった。
誰かの温もりを、傍に感じていたかった。
ひとりじゃないと、錯覚でもいいからそう思っていたかった。
「痛みを感じずに触れられる人なんていなかった…。いくら寂しくても、受け止めてくれる人なんているわけなかった…ッ！」
つんと目の奥が熱くなった。
零れ落ちようとする涙をこらえるようにぐっと唇を噛み締めれば、ふわりと優しい温もりに包み込まれた。
Shadow Angel #11＊修正済→←Shadow Angel #9
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etoile(プロフ) - viaさん» via様…！ご訪問、そして感想ありがとうございます（ ; ; ）どこまでキレさせるか迷ってたんですが、これは振り切ってしまえと笑 いつも温かいメセありがとうございます。癒されております。。 (2021年10月10日 17時) (
レス) id: cf27cf6997 (このIDを非表示/違反報告)
via - etoile様の新作を見つけて飛んできました...！相変わらず素敵な作品ありがとうございます( ;ᯅ; )死の舞踏会とは全く違う世界を楽しませて頂きました。ミホークやっちゃいましたね…笑これからも応援しています。長文失礼しました。 (2021年10月10日 13時) (レス) @page27 id: 958b7942c0 (このIDを非表示/違反報告)
etoile(プロフ) - にこぴさん» はわわわ、ありがとうございます…！最高の褒め言葉頂きました、もったいないお言葉です(*´ω`*) (2021年9月25日 19時) (レス) id: cf27cf6997 (このIDを非表示/違反報告)
にこぴ - ほわわわわ、、、死にそうなくらいすきです、、面白いです。天職ですか？？ (2021年9月24日 23時) (レス) @page12 id: 8ace50b083 (このIDを非表示/違反報告)
etoile(プロフ) - 狐仮面さん» 嬉しすぎるコメントありがとうございます…！背中を押して頂いて更新してきました(*´ω`*)いつでも両腕広げて正座待機でお待ちしております。。 (2021年9月23日 14時) (レス) id: 3d5d0c0882 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：etoile | 作成日時：2021年9月21日 23時
