P.11 ページ12
シゲside
｢あ、あの、成さん。もし良かったら、ライターのお仕事、何度かついて行ってもいいですか？｣
｢え？｣
一瞬、思考が停止した。やばい。
｢ライターって色んな職業の人に取材行くんですよね？もしお邪魔じゃなかったら、見てみたいなって…｣
嘘が崩れるのは思いの外早かった。
『私好きなアイドルがいるんですけど、その人はなんでもできる人なんです。
やってみたいことに素直になれる人、と言うか、私いつかその人みたいになりたいって思ってて...』
以前彼女が言っていたことを思い出す。あの時のAちゃんの笑顔を忘れられない俺がいた。
彼女に向けられた目は今までに見たことがないほど真っ直ぐで、ますます嘘をついた自分の胸が締め付けられる。
もし俺が本当のライターだったなら、Aちゃんを連れて色んなところに取材に行っただろう。
このまま本当にライターも始めてしまうか。
あるいは...
｢すみません、ご迷惑ですよね。やっぱり.....｣
｢Aちゃん。お腹空かない？｣
｢え？あっ、はい。｣
俺は決意する。
｢またお越しくださいませ！｣
19:30
Aside
来てしまったはいいものの、着いたのは行ったこともない高そうなレストラン。
MASORAの騒がしいフードコートの1番奥のお店。
｢Aちゃん。こっち。｣
成さんに手招きされると、案内されたのはまた1番奥の個室。
｢さ、入ろ。｣
｢あの、私こんなすごいお店初めてで...｣
｢大丈夫、大丈夫。｣
靴を脱いで、メニューを開くと見たこともない値段のお肉。
｢焼肉好き？｣
｢えっ？あ、はい。｣
成さんは運ばれてきたお肉を手際よく焼き、私の取り皿に重ねてくれた。
｢これ食べて、元気になって｣
｢あの、成さんは食べないんですか？｣
｢あー、俺は後で食べるよ。ほら、食べな。｣
ここでも成さんはマスクと帽子を取らない。
そしておそるおそる口に運ぶと、食べたことない味。
｢ふほい！おいひいへふ。はひへへはへはひは！｣
勢い余って話してしまう私を見て、成さんは目をくしゃっとさせて笑った。
｢ぷっ...はははは！
なんて言ってるか分からないよAちゃん｣
｢ふふ、凄い美味しいです。初めて食べましたこんなお肉。｣
｢それは良かった。
ねえAちゃん。さっきの話だけど…
これから話すことは俺とAちゃんだけの秘密だよ？｣
暗い証明に照らされた成さんは、ゆっくり自分のマスクに手をかけた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 106人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「NEWS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紫翠(プロフ) - 八百万さん» 八百万さん、コメントありがとうございますとても嬉しいです！！現在この作品の第2編(まっすー編)も連載中ですのでそちらもぜひお楽しみください！ (2021年6月22日 21時) (
レス) id: ea39d4d25c (このIDを非表示/違反報告)
八百万(プロフ) - 最初から一気読みしました！とても面白くて気づいたら読み終わってました！こんな面白い小説を読めてよかったです！ありがとうございます！ (2021年6月22日 16時) (レス) id: 6b4fee2f31 (このIDを非表示/違反報告)
紫翠(プロフ) - momoさん» momoさん最後まで読んでくれてありがとうございました！こうやってコメント頂けて本当に嬉しいです(泣) 今後とも紫翠をよろしくお願いします！！ (2021年4月20日 0時) (レス) id: ea39d4d25c (このIDを非表示/違反報告)
momo(プロフ) - 完結おめでとうございます！思いでの本屋さんは、更新されたら絶対に一番最初に読む！くらいな勢いで好きでした！(今もめっちゃ大好きです！)完結しましたが、また読み返します！ (2021年4月19日 18時) (レス) id: a0b82fa00b (このIDを非表示/違反報告)
紫翠(プロフ) - momoさん» STORYも最高でしたね(涙) (2021年4月3日 19時) (レス) id: ea39d4d25c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紫翠 | 作成日時：2021年3月15日 0時
