可愛くねぇ奴。- 2 -

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「岩橋くんっていう同期の人とね？話してるの聞いちゃったの。私のことは、恋愛対象として見るつもりは無いんだって…

それで、この前電話した時があって…、好きな人がいるって教えてくれた」




酒の缶の飲み口をジッと見つめながら、まるで飲み口の先に岸さんがいるような目で見つめながら、ポツポツと話すA。




「その好きな人って誰なん？」

「私には何でも言えても、それだけは言えないんだって…」




言えないなら、やっぱり岸さんの好きな人はAなんじゃないか、と思うが違うのだろうか。




「会社で見かけたらわざわざ私のところまで来て声をかけてくれたり
ご飯食べてる時に自分が食べてるものが美味しかったら絶対くれたり
困ったら俺を呼べ、とか言ったり
お昼一緒に食べようって言ってくれたり
出張先で私だけのお土産を買ってきてくれたり…」


「それは好きな奴にしかしないんとちゃう？」


「そう思うでしょ？でも現に他に好きな人がいるのあの人」




缶に残っていた酒を一気に流し込むA。

俺も色々なパターンを考えてみるが、どうしても岸さんの行動は、Aが好きだからだとしか思えなかった。




「同じ部署の後輩ちゃんとやけに仲良いみたいだし……。」

「後輩…？」

「岩橋くん言ってたんだぁ…、岸はその後輩ちゃんみたいなタイプ好きそうって」




どうせ私は清純で真っ直ぐで素直じゃないですよ、とヤケになって2本目の酒を開けたAの目は潤んでいた。

言ってあげたい。
俺が岸さんとした、店での会話を。

綺麗すぎてびっくりしたと、Aが好きだと言っていた彼のことを。

でも、きっとここで言うべきではない。



絶対何かあるはずだ。









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