全てを捨てて、ここに来て - 2 -

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『何にしようかな…』

「私も迷うな〜…」




飲み物は決まっているが、肝心のケーキが迷ってしまって何も決まらない。

だって、本当に全部美味しそうなんだもの。




「こっちの苺…、いや、こっちのチョコ…」




すると目の前に座る小瀧君が軽くくぃっと身を乗り出す。




『じゃあ、Aさんは苺で！』

「え？」

『俺チョコにします、半分こしましょ？』




ね？、と笑顔を見せる小瀧君は
さっきはファッション誌から出てきたみたいだったのに今度は少女漫画から出てきたみたいにキラキラしていた。


…そんな甘いこと、言われたことない




「え、でも小瀧君も食べたいのあるんじゃ…」

『俺ちょうどチョコやなー！チョコしか見えへんなー！って思ってたんで！』

「はは、何それ」

『だからAさんは何も気にせんでください』





もうケーキ、いらない。

…小瀧君のせいでもうお腹いっぱい。





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「ぅわ…！美味しい…」

『…ぃ』

「ん？」

『ん？あ、こっちも美味しいですよ』





差し出されたチョコケーキを口に運ぶ





「あ、こっちも美味しい」

『苺のほうもらってもええですか？』

「もちろん！どうぞ」

『え、うんま…』

「美味しいよね…！」





小さく聞こえた “ かわいい ” 。


それは言われたことのない言葉で、私は何も“ かわいい ” 反応が出来なかった。


こんな可愛げの無い私のどこに可愛いと言ったのか、頭の中がぐるぐるして


分からないから小瀧君と半分こしたケーキにゆっくりとフォークを差すしかない。






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