全てを捨てて、ここに来て - 2 -

27 ページ27

.




nozomu▷▷






「望、大切な事を今から教えようと思う」




ついさっきまで優しい雰囲気だった2人から一変、少しの電流が混ざっているような空気をピリつきを感じる。




「…誰か1人にでもバラしたら、殺すで」




何となく2人が言おうしていることが、俺の悩みに繋がっている気がする。

きっと淳太の 殺す は大袈裟なようで大袈裟じゃないし、冗談のようで少しの本心な気もした。






「Aの仕事、教えるわ」






何となく気付いていた、Aさんが仕事について話そうとしないことに。

仕事の深い話はしないし、しようとすると必ず照史と淳太の話術で上手くその話から遠のいていたから






『ええの…？聞いて』

「知っておいた方がええと思う、Aのことが本当に好きなら。」







.







「Aはな…、刑事やねん」

『刑事…』

「麻薬捜査官の若手エリート。」





照史から言われたその職名に、正直、衝撃を受けた。





「警察の人との恋愛はリスクが伴うんよ。

パートナーがいるとな？自分だけじゃなくて大切なパートナーも危険に晒すことになる。
自分が捕まえた犯人が逆恨みして、自分だけならまだしも、自分の大切な人達を襲う可能性もある。

男性が多い職場だから、下心持ちながら仕事してる奴なんていないけど彼氏はいい気分しないだろうし、事件があればどんな時でも今日みたいに出動して捜査に出なあかん。
事件が起きれば帰ってこれない日なんて当たり前やし、しかも仕事上…


俺らも考えたくもないけど


死とは隣り合わせや。


それを望に分かって欲しい。」







俺はただ、Aさんが抱えている物を1文字逃さず聞くことしか出来なかった。

そして聞き終わって、Aさんの言葉と表情を思い出して、ハッとした。







“ 私自身、仕事で認められたくてずっと真っ直ぐ仕事と向き合ってたから
結構自分に厳しくて男の人に頼れるような可愛い女性じゃないの

仕事場で信じられるのは、自分の力だから
自分1人で生きていくくらいの気持ちでいないとなんだ ”







そういうことだったのか、あの時の言葉は。








「望自身、そういうリスクも無きにしも非ずやし、Aにもそういうリスクがある。

それでもAと付き合いたい？

少しでも迷ったなら、やめておいたほうがえと思うねん。」








.









.

28→←26

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す