全てを捨てて、ここに来て - 2 -

14 ページ14

.





.





小瀧君から告白をされた後は、なるべく彼の事を考えないように今まで以上に仕事に没頭した。



おかげで仕事場では「鉄の女に近づいたら殺される」なんてコソコソと言われてしまっている。
コソコソ話しているみたいだが、しっかり聞こえているということを分かっていただきたい。





「おい最近どうした？なんかあった？」





コソコソと影で言う事なく、真正面から声をかけてくれるのは濱田先輩だけだった。





「いえ、何もないですが」

「…俺に嘘が通用すると思うか？w」





確かに、と目を逸らす。





「…ま、深くは聞かへんよ。でも吐き出したくなったらいつでも言えよ？」

「はい、ありがとうございます」

「これは…吐き出すつもりはありませんってところか？」

「そんなことありませんw」





濱田先輩はサラリと人の心を読んでいく。





「無理すんなよ」

「はい」

「…」

「ありがとうございます」





先輩が机に置いていってくれたジュースをパソコンの横に置いて、もう1度パソコンの画面と向き合うと
マウスの横に置いていた携帯が光った。





「ん？」






.






『時間と体力に余裕があったら、またお店来てくださいね！Aさんに会いたいです！』






.






パタンと画面を伏せる。





「…」





彼が言っていた 気持ちをもっと知ってもらう とはこういうことだったのか。


もう1度見てみても、変わらず小瀧君からのメッセージがそこにある。


ストレートな『会いたい』がそこにはあった。





「Aー、ちょっといいかー」

「あ、はい！」





私は携帯をポケットにしまい込んだ。







.







.

15→←13

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す