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“ 今日もダメだった〜 ”





なかなかバーで聞くことのない台詞

一体何がダメなのだろうか

でも、その言葉が合図かのように、席を満たしていた着飾った女性達がそそくさと会計をして全員店を出て行ってしまった。




「え?ちょ、どういう…」




呆気に取られている私の横で小瀧さんは立ち上がり
いつの間にかカウンターに入り、カウンター越しで私の向かい側に立った。




『今日はお仕事の帰りですか?』



グラスを1つ手に取って、慣れた手つきでグラスを拭き始める小瀧さん



「えぇ、まぁ…」



こんな時、淳太のフォローが何よりも大切なのに、淳太は沢山の女性達の会計に追われていた。



『1週間お疲れ様でした』

「ありがとうございます」



アイラインをひいているような大きな目を細めた笑顔から
私は目を逸らすように度数を強めたお酒を口に含んだ。



「…小瀧さんも、お疲れ様です」

『ありがとうございます!』



やっぱりその笑顔から目を逸らしたくなってしまう。
思わず見惚れてしまうほど、整った顔だ。




「あの…」

『?』

「何で、皆さん帰っちゃったんですか…?」

『俺と今日は関われないって分かったからだと思います。自分で言うのも図々しいですけどw』

「関われないんですか?」

『だって俺はAさんと話したいですもん』




この人は天然のタラシなのか
それとも、私は今、口説かれているのか。




「あ〜、……どうも」




こんな可愛くない返ししかできない女に後者は無い。

おそらくこの人は天然のタラシだ。




「望、ちょっとええか」




いつの間に会計を終えて戻ってきていた淳太が、小瀧さんとすれ違い様にそう言う。




『うん』

「A、悪い。ちょっと仕事の話してくるからちょっと待っててな?」

「私の事は気にしないでいいよ」

「先に飲みたいものあれば作ってから行くけど」

「ううん、大丈夫。あ、やっぱり水もらおうかな」

「ん」




淳太は水の入ったグラスを私の前に置いて、小瀧さんと関係者扉の奥に消えた。



見渡しても私しかいなくなったこのホール

BGMがやけに大きく聞こえる



私は彼らが戻ってくるまでぼうっとしていた。







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作者名:ash | 作成日時:2019年3月7日 23時

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