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episode:2
その男は、白髪で、サングラスをかけていて、
私の隣の席に座って、お酒ではなくジュースを飲んでいた。
夜の街…歓楽街にも関わらず、酒じゃないのが珍しくて、
なんだか面白い。
らしくもなくやけ酒していた私に、
お姉さんそこまでにしといた方が明日の自分のためじゃない?
と、話しかけてきた男。
「だって私、3年間も付き合った彼氏に振られたんです。」
『えぇ…それはどうして?』
お母さんみたいだと言われた。その詳細を告げると、
その男はポカンと口を開けて、その後ににこり微笑む。
『何それ…惚れちゃった。ねぇお姉さん、
これが一目惚れってやつなのかな。』
僕に教えてよ、一目惚れってこういうことだよね?と
彼は口角を上げた。
…唇、つやつや。
ぼーっとした瞳で見た彼への感想はそれしか無かった。
「私に惚れたの?お母さんみたいってフラれた私への同情なの?
それ。ねぇお兄さん、そのサングラス取ってよ。」
隣の席、つまりは手が届く位置に私たちはいるのだ。
手を伸ばすとパシっと音を立てて腕を掴まれる。
『素顔の僕は2人だけになった時のお楽しみにしない?
僕と同業の奴らならホテル…とか言い出すんだろうけど…』
僕、すっげー君に惚れたんだ。本当に。
だから、ホテルとか不健全なことはしない。
その男は店の店員に、なんでもいいから紙くれない?と
メモ用紙を貰うと、ポッケの中からマッキーを取りだし、
スラスラと何かを書出す。
「はい、これ。明日、酔いが冷めたら連絡してよ。」
渡されたのは、太いペン先で書かれた080から始まる電話番号と、「サトル」の文字。
「サトルさんって言うの?明日…もしも私がこれを明日まで無くさずに持ってて、それでいて二日酔いしなかったら、電話しますね。」
「待ってる。」
ニコッと笑った「サトル」は、ブラックカードで支払うと、
ここを去っていた。
私の意識もここで途絶えた。
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作者名:川村 | 作成日時:2023年7月28日 20時