【小説】神様の依頼箱 (ページ2)

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朝の空気と書類の束…宮本八重ページ2

「…ん、ふぁあ…」

小鳥のさえずりが響く屯所。
その小さな一室で欠伸をするのは、新撰組局長、宮本(みやもと)八重(やえ)だ。

「…寝ちまったんだな、昨日」

寝癖のついた髪を手櫛でほぐし、彼女はボソリと呟いた。
昨日は確か、大量の書類をまとめていた。そこまで、記憶がある。

「腹減ったな……」

考えても面倒なので、自室の障子を開け、縁側に出る。
外の空気を吸うと、とても心地良かった。

着物のシワを適当に伸ばすと、その手で竹刀を掴む。
裸足のまま庭に出、その竹刀を振り始めた。

「面！」

彼女の習慣は、朝の素振りだ。
一本一本大きな声を出し、降る。その快感は、彼女にしか分からないだろう。

矢文飛ばしてくるヤツら(祁答院晴明・早乙女馨)やら物送ってくる(賢木回天)将軍(変態)やら
絡んでくるドS(花霞朧)やらのせいで部屋には物が散乱していた。

その憂さ晴らしに、全力で素振りをするのだ。

「……クソォォォォォォォォォォッッッ！！」

八重は思いっきり竹刀を振りかぶり、地面に叩きつけた。

＿＿＿＿＿＿＿＿バキッ

爽快な音とともに、八重の目には折れて真っ二つに割れた竹刀が映った。
今週で何本目かも分からないその残骸を前に、八重はハッと自我を取り戻す。

「またやっちまったぜ…」

その残骸を拾い集め、八重は屯所のゴミ捨て場へ向かった。

「八重さんお早うございます…って、裸足ですか？」

「おう、お早う…ちょっとな」

挨拶と共に裸足のことをきいてきたのは、八重を妹のように可愛がってくれている佐伯(さえき)禄郎(ろくろう)。白花色の髪が綺麗な彼は、八重の頭を撫でた。

「八重さん、無理はしないようにお願いしますね？」

「おう、気ぃ付けるわ」

「それ前も聞きましたけど」

八重は気持ちよさそうに目を細め、ゴミ捨ててくるわ、と手を離れる。
しばらく行くとやっとゴミ捨て場だった。

「よっと」

残骸をゴミ袋に入れ、きちんと口を縛る。
そのまま踵を返すと、仕事を片付けるために急いで自室へと向かった。

【３月２８日更新】【のゆり】