花の種、頭痛の種。(マーリン) ページ3
──これは『夢』だ。
どこまでも広がる花々で彩られた世界。
美しく壮大な心惹かれる景色。
わたしはこんな場所を見たことがないし、思い描いたこともない。一瞬、レイシフトという可能性も考えたが、そもそもわたしにレイシフト適性はなかった。
そうなると、すべて『夢』だと結論づけるのが妥当だろう。なんともロマンチックな夢だ。
「いやはや、美しい花々を前にしても微動だにしない乙女とは。カルデアのスタッフは常日頃から激務に追われている……というわけでもなさそうだけど。キミ、ちょっと働きすぎなんじゃない? いつか過労で倒れてしまうよ?」
「!?」
背後からかけられた不躾な言葉に慌てて振り向くと、そこには見知らぬ青年がひとり。
純白のフードから覗くのは、同色のふわふわとした髪。端正な顔立ちはどこか人間離れした雰囲気さえある。
青年はそのアメジストのような瞳を細めると、一歩、こちらへ近づいた。
「はじめまして、A。突然のことで驚いただろう。でも私はキミに……って、聞いてる?」
早く目覚めてしまいたい。たしかに、ここ数日の間わたしは働きづめだった。おかげでものすごく疲れている。それこそ、こんな夢を見るくらいには疲弊していた。
「明日、何時起きだっけ……」
「せっかくこうして会えたのに、ずいぶんと他人行儀だなあ」
「どうでもいいわ。だって」
「これは『夢』だから?」
そのとおりだ。花で溢れる不思議な世界も、目の前に現れた怪しい青年も『夢』。ただでさえ疲労で頭が痛いというのに、こんな面倒くさい幻覚を見せるなんてひどい仕打ちだ。
「なんで安眠妨害するのよ! 用が済んだならさっさと帰って、いいえ、帰らせて!」
「まあまあ、落ち着いて。ちょっとした挨拶だよ。私は女の子が好きだからね。可愛い子とは是非ともお近づきになりたい」
「……っ!」
花の甘い香りが濃くなった。さっきよりもずっと近い距離に彼がいる。咄嗟に離れようとしたが、腰をがっしりと掴まれていて動けない。
彼は空いたもう片方の手でわたしの目元を覆う。じんわりと広がる温もりが、まぶたを重くしていく。夢の中でも眠れるのだろうか。
だんだん思考がぼやけていく。
「おやすみ、A。いや、おはようかな?」
そんな彼の言葉を最後に、わたしの意識は途切れた。
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カオスちゃん - やばい、、、最高ですO(≧∇≦)oこれからも無理しない程度にがんばってください! (2020年2月28日 11時) (レス) id: 0590ce9a8b (このIDを非表示/違反報告)
星良(プロフ) - にょるとさん» ありがとうございます!!そう言っていただけてとても嬉しいです……!!更新がんばります(っ `ω´ c) (2020年2月18日 22時) (レス) id: 84ce28e35f (このIDを非表示/違反報告)
星良(プロフ) - カオスちゃんさん» お返事が遅れてしまいすみません。2回目のリクエストありがとうございます!早速書かせていただきますね! (2020年2月18日 22時) (レス) id: 84ce28e35f (このIDを非表示/違反報告)
にょると(プロフ) - 貴方のような人を待っていました!!(誰)最高でした…もし良ければ私も書いてますので宜しく御願いします…素晴らしかったです。。更新待ってます。 (2020年1月6日 3時) (レス) id: ac6d2afe74 (このIDを非表示/違反報告)
カオスちゃん - 続けてリクエストごめんなさい!ドクターとマーリンで取り合いお願いします(^人^;) できればマーリンエンド、ドクターエンドお願いします(^人^;) (2019年11月7日 12時) (レス) id: 0590ce9a8b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星良 | 作成日時:2019年8月17日 19時