02.きっかけ ページ2
最初はただのおせっかいだった。
物憂げな顔で廊下に佇んでいたバーソロミューさんに、何事かと声をかけたのが始まりだ。
バーソロミューさんがカルデアに来てしばらく経つが、いつも朗らかな笑みを浮かべている彼のそんな表情を見たのは初めてだった。
もしや霊基に異常があるのではないか。魔力不足だろうか。様々な原因が思い浮かぶ。しかし生憎わたしは医療スタッフでもマスターでもない。つまり、わたしにできることは何もない。
だが、素通りすることはできなかった。いつものおせっかい癖が出てしまったのだ。
「あの、大丈夫ですか?」
わたしの声に彼は目を見開いた。しかしそれは一瞬のことで、すぐにあの爽やかな笑顔に変わる。
「ああ、大丈夫さ」
たとえ表情を取り繕ろうと、その声音にいつもの覇気がないのは明白だった。
「具合が悪いんですか?」
「いや、至って健康だよ」
「じゃあ、何かあったんですか? わたしでよければ……」
話を聞きますよ、と続く言葉は尻すぼみになっていった。ただの一職員が何を言っているのだろう。普段の彼が放つ親しみやすい雰囲気から、つい気軽に話しかけてしまった。
サーヴァントとは歴史上に名を残す英雄。二十数年しか生きていないわたしなんかより、よっぽど人生経験がある。
余計なお世話だと思われるかもしれない。いや、そう言われるに違いない。冷や汗が背筋を伝う。
けれど、彼の表情はみるみるうちに明るくなっていった。
「いいのかい?」
遠慮がちに聞いてくるも、きらきらと輝く瞳はわたしへの期待に満ちている。予想外の展開に驚いたが、同時に嬉しくなった。誰かの役に立てるのはとても喜ばしいことだ。
わたしは二つ返事で引き受けた。
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星良(プロフ) - 爆死★さん» ありがとうございますッ!!!!! (2020年11月14日 19時) (レス) id: ca2b877203 (このIDを非表示/違反報告)
爆死★ - スッッッキ!!!!(スッッッキ!!!!) (2020年11月10日 17時) (レス) id: da8da72c3c (このIDを非表示/違反報告)
星良(プロフ) - 王のお話さん» ありがとうございます!そう言ってもらえて嬉しいです!初めてのコメントで感動しました……貴方のそのお言葉がとても励みになります、本当にありがとうございます!!(ただいま新作を準備しております。お楽しみに!) (2019年8月23日 11時) (レス) id: fa3e8c95cc (このIDを非表示/違反報告)
王のお話 - 突然のコメント失礼します。率直に言いますととても感動しました!最初から最後まで話にとても夢中になりました!小説を読んでこんなに気持ちが昂ぶったのは久々で、とても楽しかったです!もし別作品を書く予定がありましたら是非読ませてください! (2019年8月23日 2時) (レス) id: d7d108a59e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星良 | 作成日時:2019年8月13日 13時