＊この世で最も美しく、哀しくない話part６＊ (ページ23)

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A「い、いいの？･････奥さん、なんて言って･･･」

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あの女の子からあっという間に噂が広がるだろうな･･･。

大通りで空車タクシーを見つける為に雨と車のライトが光る道路を

目を細めて見ている和也の後ろ姿。

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和「嫁を嫁って言って何が悪いんだよ」

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･･････ああ、もう。なんだろう。また涙が滲んで、車のライトが余計に眩しいよ。

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A「･････きっと明日、会社の人達に冷やかされるね」

和「祝儀集めに回るわ」

･･････ああ、和也。

好きだよ。

すごく、好き。

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さっきまで世界は暗い闇だと思ってた。

だけど今は、なんて世界は綺麗なんだろうって思える。

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A「･･･和也」

和「ん？･･･あ、空車いた！」

私達の前に停まろうと、スピードを緩めながら走ってくるタクシーのライトが

和也の横顔を淡く照らす。

細かい雨粒が、光の中でキラキラと舞っている。

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A「大好き」

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和也が、驚いた顔で私を振り返った。

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涙でぐしゃぐしゃで、髪もメイクもぐしゃぐしゃな私だけど

笑った。

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A「大好き。････一緒にいてくれて、ありがとう」

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和也の驚いた顔はほんの一瞬で。

すぐにいつものちょっと意地悪な顔で笑う。

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和「運転手さん、Ｋ町まで」

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そして私の耳元に顔を近づけて「俺の膝の上、今、座りにくいことになってるけどいい？」

と笑った。

A「････下ネタかよ！」

笑って和也の腕をグーでトン、と叩く。

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和也が心底可笑しそうに笑うその顔が、大好き。

大好き。

大好き。

大好き。

大好き。

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タクシーから降りて家の玄関を開けてすぐに。

和也の腕が私を抱きしめて、私のコートを脱がして･･･ブラウスのボタンを外してきた時。

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私は幸せで、蕩けそうで、「和也」小さく和也の名前を呼んだ。

薄暗い玄関に消えていく愛しい人の名前は、

まるで宝石みたいにキラキラ光ってる。