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センラside
「私と折原さん……私とセンラさんじゃ、釣り合いません」
Aは、そういった。
彼女の言い方や性格からして、俺がAに釣り合わない、という意味ではないだろう。
Aは、自分が俺に相応しくないと思っているということ。
正直さっきから何故付き合ってくれないのか聞きすぎてまじで俺うざいな、Aの今後の俺のイメージ最悪やろな、なんて自虐していたが、そんなことはどうでもよくなってしまった。
「それ……本気で言ってんの?」
少し低めの声が出てしまった。
Aはそれに怯えたように、肩をびくっとはね上げる。
「今からAのいいところ言うから、ちゃんと聞いて。
まず可愛い。めっちゃ可愛い。
それから優しい。俺の方が仕事終わるの遅くても待っててくれる。
それに仕事真面目に頑張ってるやろ。
あと赤い服ばっか着ちゃうくらい坂田に一途。俺からもらった缶バッジを大事にしてくれてるのとか、ほんまあげたかいあったなって思ってる。
それからこれはついさっき発覚したことやけど、俺がセンラって気づいても以前と変わらない態度で接してくr」
ここまで話したところで、Aの小さな手に口を塞がれた。
目の前の彼女の顔は、赤く熟しきった林檎のように、彼女の大好きな坂田の髪色のように、赤く赤く染まっていた。
「や、やめて……ください」
今にも消え入りそうな声でそう言われる。
ほら、世界一可愛い。
「えー…なんで?」
恥ずかしいから、なんてのはわかってる。
でも、意地悪したくなっちゃうんやって。仕方ないやろ。
「わ、わかってて聞いてますよね……?」
「ふふ、どうやろねぇ……まぁ、それは置いといて、これでAと俺が釣り合ってることわかってもらえた?」
「で、でも、折原さんはセンラさんで」
「歌い手やってる彼氏は、嫌……?」
蘇る過去の記憶。
俺は歌い手に夢中になって、前の彼女と別れた。
あれは全部、俺が悪い。
だから、歌い手が嫌って言われてしまったら、それこそもう、何も言えなくなる。
「そんなことないです。すっごい素敵だと思います」
Aは心からそう思っているように、キラキラと目を輝かせた。
でもすぐに表情を曇らせて、言葉を続ける。
「ただ、本当に私なんかが好きなんですか?本当に、私でいいんですか……?」
この子は、どれだけ自分に自信がないのだろう。
こんなに可愛くて、素敵な彼女に、惚れない人なんていないやろ。
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響 - これからも頑張ってください!長文失礼しました。(続きです。初めてこんなにコメント書きました(笑)) (2022年3月2日 17時) (レス) id: 7b474202c0 (このIDを非表示/違反報告)
響 - 日替わりのほうで予告を見て読ませていただきました!語彙力ないのでうまく伝えられるかわかりませんが一つ一つのお話がしっかりしていて話の展開も全然急じゃないのに飽きなくてすっごくいい作品でした!個人的には番外編の志麻さんが出てくるお話が好きです(笑) (2022年3月2日 17時) (レス) @page44 id: 7b474202c0 (このIDを非表示/違反報告)
坂ちゃん(プロフ) - やばい。すげぇ似てる。私、恋人いるんですけど、坂田家なんです。その上恋人の好きな色は黄色... (2018年12月24日 11時) (レス) id: 2e3d2564c8 (このIDを非表示/違反報告)
せらてゃ - 全て読ませて頂きました!!小説読んでて初めて笑いましたwwおもしろいとこがたくさんあって笑っちゃいましたwもうかわいかったです!!これからも頑張ってください(><) (2018年11月25日 1時) (レス) id: 838c277702 (このIDを非表示/違反報告)
ほわいとふぃっしゅ(プロフ) - つぼみさん» そのように言っていただけて本当に嬉しいです……。少し先になってしまうのですが、坂田さんの短編を書かせて頂きたいなとは思っているので、気長にお待ちください!! (2018年10月29日 18時) (レス) id: b3ad7ee62f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほわいとふぃっしゅ | 作成日時:2018年9月8日 22時